全日本年金者組合
ホーム
年金、医療、介護など社会保障の充実、安心してくらせる社会を

各種資料・情報


年金引き下げ違憲訴訟(東京民報より掲載)

「もらいすぎ7兆円はねつ造」厚労省資料解析で判明

 
「年金引き下げ違憲訴訟」東京原告団(728人)の第11回口頭弁論が11月20日、東京地裁(朝倉佳秀裁判長)で行われました。

 原告弁護団は準備書面で、年金を一律2・5%引き下げるa根拠として厚労省が主張した「もらいすぎ7兆円」という金額は過大で、事実と乖離したねつ造だったことを指摘しました。

 政府は、2012年に「特例水準の解消」(過去の物価下落時のスライド停止分を取り戻す)という名目で計2・5%の年金を削減する「平成24年改正法」を強行しました。このとき厚労省など国側は、特例水準による「もらいすぎ」の分として「2000年度から09年度までで累計5・1兆円」「10年、11年度、毎年1兆円」「11年まで累計7兆円」との数字を提示。「もらいすぎの7兆円」と喧伝してきました。

 「7兆円」の算出方法は、毎年の基礎年金と厚生年金の給付費合計に、特例水準と本来水準の最も高い乖離率(最大2・5%、図の@)を一律に乗じて(A)だしたものです。

 しかし、実際の乖離率は年金受給者の年齢ごとに異なっています。「平成24年改正法案」が国会審議されていた当時、2・5%の乖離率だったのは1936年度以前生まれの人で、受給権者全体に占める割合は3割を切っていました(B)。1938年度以後生まれの受給権者の乖離率は1・8%でした。




政策立案に歪み

 原告弁護団は「『最大の乖離率』を一律に全体の受給権者の受給額に乗じれば過大な数字になります」「昭和11年(1936年)度以前生まれの受給者の比率は、年度を経るごとに、高齢となるためその割合は減少します。したがって5・1兆円、7兆円といった審議において前提となった特例措置維持による『もらいすぎ』の金額は過大であった」と指摘。「特例措置の解消とは、受給者に不利益を強いることです。そのような不利益を正当化する根拠として挙げられていた数字が過大であったことは、政策立案過程、法案審議過程にゆがみが生じていたこと、不適正であったことを意味します」と厳しく断じました。


実態隠して強行

 「もらいすぎ7兆円」のねつ造は、東京原告団の田端二三男副団長が厚労省資料を詳細に解析して解明しました。田端氏は、「厚労省は当時、乖離率が生年度別に3通りになることを把握していながら最大乖離幅を一律に乗じた数字にしていた。厚労省が厚生年金の報酬比例部分について3通りの乖離率があったことに言及した公表資料は、特例措置の解消が終わった2015年1月のプレスリリースが初めてだった」と、国民に実態を隠して法案を強行した経緯を語っています。

 口頭弁論終了後の午後、国会内で報告集会が行われました。これには日本共産党の小池晃書記局長・参院議員、吉良よし子参院議員が参加し、連帯と激励の挨拶をおこないました。次回口頭弁論は、来年2月7日です。