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2016年6月掲載 (年金者しんぶんより)
 
今年の10月から実施の短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の適用拡大で、どういう人が新たに加入できるのでしょうか。

A

現在の短時間労働者の被用者保険への加入の基準は、「1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上である就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取り扱う」というものです。
 今年の10月からは、この勤務時間・勤務日数が常時雇用者の4分の3未満でも加入できるようになるのですが、次のような条件があります。
 まず新たに加入できる短時間労働者は、厚生年金保険被保険者が常時500人を超える事業所に勤務している方に限られます。500人以下の事業所は従来の基準のままです。
 さらに、500人超事業所の短時間労働者すべてが加入できる訳ではありません。加入できるのは次の@からCのすべてに該当する方だけです。@週の所定労働時間が20時間以上であることA賃金の月額が8万8000円(年収106万円)以上であることB勤務期間が1年以上見込まれることC学生でないこと。
 Aの賃金の中には、時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、結婚手当、賞与等は含まれません。2016年6月5日 (年金相談室 小林 善雄)
 
先月から実施された「特定事由に係る申出等の制度」とはどういう制度ですか。説明して下さい。

A

厚生労働省が説明誤りとしている事例で説明します。井上さん(当時60歳)は自分が老齢基礎年金を受けられるかどうか不安になり、年金事務所に相談しました。相談員から受給資格期間(25年)を満たしていないが、過去に各種学校に在籍していたので「卒業証明書等があればカラ期間(年金額には結び付かないが、受給資格には算入できる期間)となるので受給資格を満たし、65歳になれば年金を受けられる」との説明を受けほっとしました。
 65歳になった井上さんは年金請求手続きのため年金事務所に行ったところ、相談員から「昭和61年3月以前の各種学校に在籍していた期間はカラ期間にならないため受給資格期間を満たさず、年金は受けられないと言われました。(各種学校の生徒であった期間がカラ期間になるのは昭和61年4月1日以後のものに限ります)。結局、井上さんは65歳から2年間特例任意加入して、67歳から年金を受給するはめになりました。
 このような場合、厚生労働大臣に「年金事務所が正しい説明をしていれば60歳から任意加入して、65歳から年金を受給できた」との申し出することができるとされ、承認されると説明誤りで払えなかった2年分の任意加入保険料の納付が可能となり、申し出をした翌月から年金額が増額改定されます。2016年5月6日 (年金相談室 小林 善雄)
 
65歳を過ぎると障害年金の請求は出来ないのでしょうか。

A

いちがいにそうだとは言えません。吉川さんの場合、初診日は2014年3月で64歳でした。吉川さんは自営業で60歳まで国民年金に加入していました。国民年金の障害年金である障害基礎年金は初診日に国民年金に加入している人か、又は国民年金に加入していた人で、日本国内に住所があり、60歳以上65歳未満である人が障害認定日(初診日から起算して1年6カ月を経過した日)に1級又は2級の障害の状態にあるときに支給されます。
 吉川さんの場合、2015年9月の時点で障害等級に該当していれば支給されます。ただし、国民年金加入期間のうち未納期間が3分の1を超えている場合は支給されません。
 井上さんは現在79歳です。24歳の時に事故で右足に障害を受けました。井上さんの場合も初診日に厚生年金に加入しており、障害認定日に1級、2級又は3級の障害の状態にあれば障害年金を受けられます。ただし、半世紀以上も前の初診時の証明と障害認定日の時点の診断書を用意しなければなりません。
 以上の事例とは違って、障害認定日に1級又は2級(厚生年金の場合は1級、2級又は3級)の障害の状態になかったものが、同日後65歳の誕生日の前々日までに障害等級に該当する程度の障害状態になった時は、その期間内に障害年金を請求することができます。(この制度のことを事後重症の障害年金と言います)65歳過ぎは駄目です。2016年4月5日 (年金者相談室 小林 善雄)
 
この度、日本年金機構から付加保険料の特例納付制度のお知らせという手紙が届きました。このお知らせの意味がよく分かりません。説明して下さい。また、回答をどのようにするのかも教えて下さい。

A

国民年金の第1号被保険者(自営業者など国民年金の保険料を自分で直接納める加入者)は通常の保険料のほかに400円の保険料(付加保険料)を納めることができます。
 2014年3月以前の規程では、付加保険料を納めることになった方が付加保険料を納期限(翌月末)までに納付しなかったときは、その日に付加保険料の納付をする者でなくなる旨の申出(これを「みなし辞退」と言います。)をしたものとみなされました。
 ところが、このみなし辞退後の期間の取扱いについて、当局が誤って付加保険料を徴収した期間があり、この間の保険料について、還付処理が行われている方と行われていない方が混在することになりました。
 @みなし辞退後に還付を受けた期間(通常の〇印の期間)がある方……「付加保険料の納付申込書」の「付加保険料を納付することを希望します。」に「〓(※)」点を記入すればその間の保険料を納付することができます。
 Aみなし辞退後の期間が納付済みのままになっている期間(通知の△印の期間)がある方……「付加保険料を納付済みのままとすることを希望します。」に「〓(※)」点記入すれば、本来は還付する付加保険料が正しく納めた期間となります。2016年3月5日 (年金相談室 小林 善雄)
 
私は訳あって76歳で老齢厚生年金、老齢基金年金を請求しました。5年分は一度に支払われましたが、それ以前の分は時効ということで支給されませんでした。年金給付に時効があるのでしょうか。

A

はい、あります。国民年金法は「年金給付を受ける権利(当該権利に基づき支払期月ごとに又は一時金として支払うものとされる給付の支給を受ける権利を含む。)は、その支給事由を生じた日から5年を経過したときは、時効によって、消滅する。」と規定しています(厚生年金保険法にも同趣旨の条文があります)。
 しかし、5年以上経過していても年金が支払われる場合があります。
 その一つは、年金記録の訂正を行った場合です。新たに厚生年金の加入期間が見つかったなど厚生年金被保険者原簿または国民年金原簿に記録した事項が訂正され、増額された年金額が決定された場合は時効とせず、年金が支払われます。
 もう一つの場合は、事務処理誤りと認定されたものは、5年以上経過していても時効になりません。
 厚生労働省は「事務処理誤り」で8つの基準をつくりました。@受付時の書類管理誤りA確認・決定誤りB未処理・処理の遅延C入力誤りD通知書の作成誤りE誤送付・誤送信F説明誤り(制度の説明誤り・説明漏れ、請求書等の作成・添付についての指示誤りを行った事実が確認できる場合)G受理後の書類管理誤り 2016年2月5日 (年金相談室 小林 善雄)
 
母親が亡くなり未支給年金の請求をした所、年金事務所から母親が受給していた遺族年金に過払いがあったことが判明したが、本人は既に亡くなっているので内払調整ができないため、相続人の私に5年分割で現金納付をしてほしいとの通知が来ました。私が返納しなければいけないのでしょうか。

A

年金事務所の「返納に関するお知らせ」を拝見しますとお母さまがご自分の退職年金を受給した時点で、遺族年金の寡婦加算を支給停止する必要があったにもかかわらず、停止されていなかったため過払いになっていたとのことです。
 お母さまが受給していた旧法の遺族年金は一定の条件に当てはまると寡婦加算が支給されます。(2014年度価格で14万8200円)ところがご自分の年金を受給すると、加算は支給停止するという規定があります。しかし、年金の専門家でない限りこんなことを知っている人はいません。お母さまに責任は一切ありません。
 しかしながら、厚生年金保険法には「年金の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金が支払われたときは、その支払われた年金は、その後に支払うべき年金の内払とみなすことができる」という規定がありますからお母さまが存命中であれば遺族年金から一定の金額を返済することになると思います。しかし、亡くなって内払調整不能だから相続人に返済を求めるのは行き過ぎだと思われます。2016年1月5日 (年金相談室 小林 善雄)
 
この10月から国民年金保険料の5年後納制度が始まったと聞きました。この制度の内容を教えてください。

A

年金確保支援法にもとづく10年後納制度が本年9月末で終了し、新たに年金事業運営改善法にもとづく5年後納制度が本年10月から始まりました。
 国民年金の保険料は2年を過ぎると時効によって納付することができません。これに対して、5年後納制度は2015年10月1日から2018年9月30日までの間に限って、国民年金の加入者または加入者であった方が厚生労働大臣の承認を受けて、承認の日の属する月前5年以内の未納期間について、当時の保険料額に加算額を加えた後納保険料を支払うことができるとした制度で無年金者や低年金者を少なくすることが目的です。
 納付額は2010年度(5年度目、10月〜3月)は当時の保険料月額1万5100円に対して1万5900円、2011年度(4年度目、4月〜3月)は当時の保険料月額1万5020円に対して1万5520円、2012年度(3年度目、同上)は当時の保険料月額1万4980円に対して1万5220円となっています。
 10年後納制度開始から1年の時点の実績は「お知らせ」を送った該当者2009万件に対し納付申込書の受付件数は86万件で、4・3%にとどまっていました。高額でしかも定額の保険料の下では、無年金、低年金の解決は困難です。 2015年12月5日 (年金相談室小林 善雄)