全日本年金者組合
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私たちの主張・見解

   2004年までの主張



大増税計画に反対する運動の推進について 04年11月2日
改悪年金法の実施中止を中心とする当面の運動    第2回常任常任中央執行委員会  04年10月10日
当面の運動推進について  第1回中央執行委員会決定 04年9月10日
『9条の会』に連帯し「改憲」反対の運動を飛躍的に強めよう 04年8月10日 第1回常任中央執行委員会
年金改悪法案の強行可決・成立に対する抗議声明  2004年6月5日
2004年「年金改革」−内容と批判−(「年金改革」を斬る)  2004年6月5日
年金改悪法案の白紙撤回まで、全力でたたかう決議  05年5月25日
いま、日本の年金制度の問題点は
高齢者が豊かな老後をおくるために 年金者組合は要求しています
2004年「年金改革案」閣議決定に抗議する声明  04年2月10日
年金大改悪を含む04年度予算案の閣議決定に対する抗議声明  03年12月25日
厚生労働省「年金改革」案についてこう考えます  03年11月19日
厚生労働省年金「改革」案に対する抗議声明  03年11月18日
日経新聞で報じられた 「支給中の年金4%削減を求めた」ことに対する抗議 03年8月13日
女性と年金にかかわる要請書  03年5月8日
年金切り下げへの抗議声明  03年3月28日
「厚労省骨格案」批判  2003年1月 
年金の物価スライド凍結解除による年金切り下げに断固反対します 02年8月6日
厚生労働省「年金改革の骨格に関する方向性と論点」についての検討と批判(案)  2003年1月
「女性と年金検討会」の報告書について 2002年5月10日
いま何故「最低保障年金」か <補論>政府・財界の宣伝に反論する  2001年6月 定期大会の決定  
大増税計画に反対する運動の推進について
2004年11月2日  全日本年金者組合中央執行委員長 森 信幸
 大増税計画の第1弾として実施された年金課税強化につづいて、第2弾としての定率減税の縮小廃止、そして第3弾の消費税増税がもくろまれています。
 年金の削減と合わせて、私たちの生活に及ぼす影響は甚大なものがあり、年金課税の実施中止を求めつづけるとともに、これ以上の増税はなんとしても阻止しなければなりません。
 年金者組合は、下記のように緊急行動に取り組むことにしました。

                    記

  1.情勢と取り組みの意義

 @ 定率減税の縮小・廃止について、去る10月18日の国会審議で、小泉首相は低率現前の縮小・廃止を検討中であることを明らかにしました。政府税制調査会は、これを受けて12月中旬に出す答申「平成17年度税制改革について」のなかでこれを打ち出す危険性が高まっています。
また、 消費税については、すでに自公民三党が07年に向けての大増税の方向性を打ち出しています。
 A 税制調査会の答申に「定率減税の縮小・廃止」を盛り込ませないことが、当面の緊急課題です。そして、定率減税を縮小・廃止させないことが、次の消費税増税を阻止する確かな足がかりとなります。
 B 定率減税の縮小・廃止は現役世代にも重大な影響を及ぼすものであり、年金課税問題以上に多くの世論を結集してたたかえる課題です。

 2.政府税調会長宛の要請ハガキを送る運動


 @ 定率減税の縮小・廃止をしないよう求める要請ハガキを、すべての組合員と家族等が送る。
 A 実施時期は、11月末までとする。
 B 切手代は、原則として各組合員の負担とする。
 C ハガキは、組合員数の2倍を各県あてに送付するので、家族・知人、友誼団体等の協力を得て、10万通以上を送る運動とする。
 D ハガキ(別紙見本)は、11月8日に中央本部から各県あてに送付する。
  *政府税制調査会では「税制に関する意見」を募集しています。詳細は同調査会のホームページをご覧ください。
  〈郵送の場合〉〒100-8694 東京中央郵便局私書箱1666号
  〈電子メールの場合〉coo02tax@mof.go.jp

  3.財務大臣宛の個人請願を行う運動


 @ 上記ハガキと同内容の個人請願を、すべての組合員と家族等が行う。また、街頭での署名も行う。
 A12月17日の第17回中央委員会終了後、全中央委員と首都圏を中心とする組合員により、財務省での個人請願と座りこみ、集会を実施する。(規模は500人を予定)
 B 個人請願用紙は中央本部が清刷を作成し、各県で組合員の2倍の枚数を印刷して使う。
 C 署名の第1次集約は、11月末日とし、各県ごとに中央本部に送付する。

改悪年金法の実施中止を中心とする当面の運動

04年10月10日  第2回常任常任中央執行委員会の決定

はじめに

 臨時国会が開催されるこの時期、改悪年金法の実施中止を求める運動や、老年者控除の廃止など課税強化を凍結させ、新たな定率減税の縮小・廃止に反対する運動は新たな局面を迎える。また、介護保険の改悪や生活保護の改悪に反対する運動は、本格的なとりくみが求められている。
 
自公政権は、これら社会保障の改悪を進めながら、一方では日歯連の自民党旧橋本派へのヤミ献金事件をうやむやにし、金権腐敗政治の温床維持を図ろうとしている。
 
 アメリカのイラク占領は、その根拠とした核兵器等の存在が自らの調査によっても否定せざるをえなくなり、不当性がいっそう明らかになった。あわせてイラク国内の治安も悪化し続けている。自衛隊をただちに撤兵させ、事実上の憲法蹂躙状態をたださねばならない。
 以上の状況をふまえ、また先の第1回中央執行委員会決定(914日)に基づき、当面の運動を次のようにすすめる。

1.改悪年金法の実施中止を求める運動

〈情勢〉
 
*民主党は、「実施中止法案」を提出しない可能性が高まっている。(中央本部が9  月28日におこなった要請・懇談の席上での感触等による)
 
*共産党単独、あるいは同党と社民党との共同でも、法案は提出できない。(予算を 伴う法案の提出権は、衆議院で50人以上、参議院で20人以上)
 
*民主党は「三党合意」路線に大きく傾斜しつつあり、臨時国会あるいは通常国会 での「年金改正法」提出を準備している。
 
*共産党は、あくまでも「実施中止」を主張し続けるとしている。(中央本部が10 月5日におこなった要請・懇談の席上での小池晃政策委員長の発言)
 
*「三党合意」の経緯をふまえて発足した内閣官房長官の諮問機関である「社会保 障の在り方に関する懇談会」は年内に5回開催し、年金、介護、医療、少子化等 についての論点を整理して、来年には「負担の問題」を論議するとしている。
 
*「連合」は、上記「在り方懇」の構成員であること等を背景に、民主党に「三党 合意」への復帰を働きかけているとも伝えられる。


〈運動の方向〉
 
@ 自公民は、「三党合意」路線を基本に、今回の改悪を実施しながら、数年先のさ らなる改悪をめざす方向をとりつつある。これは今回改悪を前提に、かねて財界 が主張する消費税の導入と2階部分の民営化に突き進むもので、われわれのめざ す方向と真っ向から対立する。
 
A 今回改悪の延長線上では、どのような「改革」であっても真の改革にはなりえな い。今回改悪の根幹に「マクロ経済スライド」が据えられていることからだけで も、それは明らかである。
 
B 年金者組合は、あくまでも改悪法の実施中止と国民的な議論のやり直しを求めて 運動を続ける。国会での見通しが暗いことことを理由にこの要求を取り下げるこ とにはならない。逆に、未だに改悪法に反対している78割もの国民の声に応 え、いっそう喚起するすることが求められている。
 
C この観点に立って、「改悪法の実施中止を求める署名」は、引き続き年内を期限 として実施する。この署名の実施時期について先の第1回中央執行委員会では『臨 時国会で法案の決着がつくまで』としていたが、「中止法案」の提出がないと見込 まれること等から、修正するものである。
 
D 署名運動について、各県・支部でのとりくみに濃淡があることに留意しなければ ならない。国会状況だけに目を奪われず、不当な改悪許さずの立場を堅持して要 求し続けることが重要である。
 
E 宣伝用のチラシは、10月下旬に新規に作成する。内容は、国会状況に応じた呼び かけと課税強化反対を加えたものとする。
 
F 議員要請、自治体要請等については規定の方針により推進する。
 
G 1月以降の運動の重点、署名の項目等については、中央委員会(121617日 に予定)で決定する。

2.最低保障年金制度を実現する運動

3.介護保険の改悪に反対する運動


4.医療改悪に反対する運動


5.課税強化に反対する運動


6.憲法改悪に反対する運動


 
@ 改悪年金法の実施中止と最低保障年金制度実現は最重点課題であり、年金者組合 が先頭に立って運動をすすめる。
 
A 介護保険と医療の改悪には、関連する他団体と共同して運動をすすめる。中央社 保協の方針(別掲、中央社保協の「政府の見直し案に対する要求)に沿って、署名用紙等も中央社保協作成のものを使用する。
 
B 課税強化に反対する宣伝を強める。11月には政府税調の答申も予定されており、 適宜学習資料等を作成する。
 
C 憲法改悪に反対して、年金者の「9条の会」の活動を強め、拡げる。


〔介護保険制度の見直しにあたっての中央社保協の提言〕  政府の見直し案に対する要求
1.2割から3割への利用料引き上げをやめること
2.住民税非課税者への利用料は3%とすること
3.介護保険施設の部屋代、食費などの利用者負担を増やさないこと
4.保険料の引き上げや20歳からの徴収をやめること
5.国の制度として、保険料の減免制度を設けること
6.障害者支援費制度との統合をやめること
7.要支援、介護度1のサービス利用を制限しないこと
8.施設や居宅サービスの整備を国と自治体の責任ですすめること



当面の運動推進について
2004年9月10日 第1回中央執行委員会決定
 第16回中央委員会の決定を受け、秋から年末にかけての当面する運動について、次のように推進する。

《はじめに》

@ 参議院選挙で「二大政党」づくりにとりあえずの成功を収めた財界は、憲法改悪と「構造改革」の実現に向けて着々と手を打っている。なかでも、年金・介護・医療・生活保護を中心とする社会保障制度の改悪と変質、年金課税の強化と消費税増税を含む「税制改革」、そして教育基本法の改悪と相待った憲法改悪は、私たち高齢期の安定した生活を求める者にとって、まさに看過できない重大問題である。

A この時期は、来年度国家予算原案作成期にあたり、財界と自公政権が来年度以降

に実現しようとする課題が浮き彫りなる。たとえば、日本経団連が武器輸出の解禁・軍事産業の振興を打ち出したのに合わせて、防衛庁は新年度予算要求で海外派兵型への転換をめざしている。

B 今秋の運動の重点は以下の6課題とする。日本の在り方を大きく変えようとしている財界と自公民政府に抗して、町から村から大きなうねりを巻きおこすよう、全国の仲間に訴える。

C 1011月の仲間づくり月間でもある。「運動のなかで仲間を増やし、仲間を増やして運動を拡げる」活動スタイルを貫こう。文化・レク活動も楽しみながら、元気に活動をすすめよう。

 1.年金改悪の実施を中止させる運動

@ 参議院選挙直後の臨時国会で、「改悪年金法の中止法案」は否決されたが、改悪に反対する国民世論は依然根強い。94日に内閣府が発表した「国民生活に関する世論調査」によれば、政府への要望のトップは年金・医療など「社会保障改革」であった。また、同じく「悩みや不安を感じている」項目では、40代、50代の7割以上が「老後の生活設計」をあげている。

 一方、「三党合意」の経緯をふまえた内閣官房長官の私的諮問機関である「社会保障の在り方に関する懇談会」が730日に発足したのをはじめ、「経済財政諮問会議」は消費税を導入した年金一元化の議論をすでに本格化している。826日の会議の席上では、竹中経済財政担当相が「マクロ経済スライド、保険料の上限設定は『止血作用』」といったことさえ語られている。このように「三党合意」をベースにした動きは急速にすすみ、民主党を巻き込む方向が強まっている。

A 民主党は、改悪年金法の廃止を主張してきたが、ここにきてのトーンダウンも否定できない。また、自公政権は臨時国会の開会を10月中旬にまで引き延ばし、日歯連贈収賄事件や年金問題での追及をのかがれようとしている。民主党に再度の廃止法案提出を促す世論づくりが急がれている。

B 臨時国会開会日に全国統一行動を実施する。中央では、首都圏各県を中心に国会前座りこみ等を検討する。各県は、それぞれの条件に応じてもっとも効果的な行動を展開する。

C 「中止を求める請願署名」は、9月末を第1次集約として、全国基準として組合員一人5筆以上を設定し、臨時国会開会日に30万筆分を提出できるようにする。その後も「中止法案」の決着がつくまで継続する。

  愛知と滋賀がすでに組合員比2.62.3倍の署名を集めており、両県に追いつく取り組みが各県に求められている。

D 秋の臨時国会で再度法案を提出するよう各党に要請する。要請内容は、現在取り組んでいる署名3項目に「老年者控除の廃止と公的年金等控除の縮小を実施せず、元に戻すこと」を加えた4項目とする。自民・公明両党に対しては、あわせて抗議を行う。

E 各党への要請・抗議は、中央本部が9月中に行う。これに合わせて、各県は地元 出身国会議員への要請を行う。

F 7月に作成したチラシの在庫が無くなったため、このチラシをもとに一部補強し たチラシの清刷を作成し、9月中旬に各県あて発送する。

2.最低保障年金制度を実現する運動

@ 前項でふれたように、財界等は、「一元化」を名目にした年金のいっそうの改悪と消費税を導入する「抜本改革」論議をすすめている。また、「連合」は96日開催予定の第2回「社会保障の在り方に関する懇談会」でその見解を提出するとしているが、消費税増税を前提とした内容のものであることは間違いない。

A わが組合が提唱している最低保障年金制度は、現行制度を基本にしつつ最大の欠陥である土台部分の脆弱性を補おうとするもので、また、その財源を消費税によらず、国と大企業の責任により賄わせることとしている。この提案こそが現実的であり、社会保障制度の理念にもっともふさわしいものであることがいっそう明らかになってきている。財界等の主張するいっそうの改悪に対置する案としての重要性も増している。

B 全労連と日本共産党がそれぞれ提唱している最低保障年金制度は、基本理念においてわが組合の提唱と一致するものであるが、金額の設定などで若干の相違がある。

 運動をおおきく拡げていく観点から、両者との研究・協議をかさね、多くの団体・個人が一致して支持できる案に練り上げる。

C 制度についての年金者組合としての具体像づくりをすすめているが、この成案を 12月の中央委員会までにまとめる。

D 全労連や労働総研が取り組んでいるナショナルミニマムの研究・運動展開とも連 携して、運動を大きく拡げる。

E 年金改悪反対闘争をたたかった共闘組織、共同行動を引き続き維持し、強化する。

F 意見書採択、自治体要請等の運動も引き続き強化する。

3.年金課税の強化(04年改悪)の実施を中止させる運動

@ 所得税の老年者控除の廃止と公的年金等控除の縮小は、05年課税分から実施される(確定申告は06年春)。さらに、住民税と国民健康保険料と介護保険料には、06年度分からこれが反映する。現在の課税対象者が大幅増税になるばかりでなく、これまで非課税であった者のうち新たに課税対象となる者が膨大に発生するものと思われる。

A この増税は、すでに決定している事柄ではあるが、企業減税の拡大、累進課税の緩和、そして消費税増税につながるものであり、それらを阻止するうえでも反対の声を上げていかなければならない。

B さらに追い打ちをかけるように、定率減税(20%)を廃止する動きが出ており、これについては先制的に阻止する運動をすすめる。

C 改悪の影響がどのように現れるかの調査と学習を急ぎ、実施を中止させる運動を 具体化する。

D 街頭宣伝等で広く増税の不当性を訴えるとともに、年金にかかわる自治体や各級 議員への要請の際にこの項目も加える。

4.介護保険の改悪を阻止し、改善させる運動

5.高齢者医療制度の創設をはじめとする医療保険制度の改悪を阻止し、改善させる運動

@ 介護保険制度のいっそうの改悪をめざして、政府は05年通常国会への法案提出を前提に急ピッチで作業を進めている。また、医療制度の改悪についても06年通常国会への提出を予定している。

A 中央社保協は、824日の運営委員会で「介護保険および支援費制度をめぐる今後の運動について」の方針を確認した。また、924日には、「憲法25条にもとづいた高齢者・障害者福祉の改善・拡充を−介護保険制度の見直しにあたっての中央社保協の提言」を決定することとしている。わが組合は、中央社保協の一員として、基本的にこれらの方針・提言基づいて運動をすすめる。

B 中央本部は、基本的な学習を進めるとともに、先駆的に運動をすすめている中央 社保協や自治労連、民医連等との連携を深める。

C 中央本部は、各県・支部の運動に必要な資料等を提供する。

D 必要に応じ、関係省庁や国会議員への要請行動にとりくむ。

6.憲法改悪を阻止する運動

@ 憲法をめぐる世論は複雑である。98日付毎日新聞の世論調査によれば、「改める方がよい」としたものが46%で、「改めるべき点」の1位が「自衛隊の位置づけを明確にする」こととなっている。「改めない方がよい」は19%で、ただし1年前の同調査より3%増となっている。憲法改悪反対の世論を過半数にするのは、決して容易なことではないことを示していると同時に、運動を急速に高める必要性をも示している。

A 810日に発足した「年金者九条の会」につづいて、徳島県本部が824日「徳島年金者9条の会」を結成し、愛知県本部が928日結成を予定している。各県・支部が「会」づくりにただちに取り組むよう呼びかける。「会」としての運動の内容やすすめかたについて多くの議論が交わされているが、それらは、その地域などの状況に応じて柔軟に対処する。試行錯誤を重ねながらも、急いで「会」の旗を揚げ、『9条の会』の呼びかけへの賛同者をひろげることが求められている。

B 全労連等6団体が呼びかけ、916日に発足する『憲法改悪反対共同センター』 に参加する。また、各県はこれに対応して結成される県段階のセンターに参加す る。

B 『年金者九条の会』(中央本部対応)は、全国での運動の広がりを推進するために、ニュースを発行する。また、のぼり(『憲法を改悪するな−年金者九条の会』)を作成し、街頭行動の際に活用する。

C 各県・支部に対応する『九条の会』は、署名運動や老人クラブ等への働きかけとともに『語り部』活動を重視してとりくむ。活動のスタイルも工夫して、おおいに広げることを重視する。たとえば、戦争体験記は文集にまとめるよりもチラシにして広く配布する、各地に残る戦跡や戦史を発掘して知らせるなどなど。

D 戦争を知らない世代への働きかけを重視する。

E 全労連は、11月に「憲法改悪阻止中央集会」を開催する方向で検討をすすめてい る。この開催が決まった場合には、全国からの参加を呼びかける。


 『9条の会』に連帯し、
 「改憲」反対の運動を飛躍的に強めよう
 2004年8月10日 第1回常任中央執行委員会   

  全日本年金者組合第1回常任中央執行委員会は、第16回中央委員会の決定に基づき、『9条の会』に連帯して憲法改悪に 反対する運動を飛躍的に高め、ひろげることを確認しました。
1 情 勢                
1.憲法改悪推進の動きが急です。自民党は、05年4月までに「改正」案をまとめるとしています。また、「07年には戦後初の憲法改定が実現する」(中山太郎衆院憲法調査会会長)と位置づけています。 公明党は、「9条は堅持」としつつも、一方で「加憲」を掲げ、「憲法改正国民投票法案」を05年通常国会を目途に成立をめざすとしています。一方、野党である民主党も、「論憲」から「創憲」に踏み込み、岡田代表は、8月1日のフジテレビ番組で「憲法を改正して国連安保理の決議がある場合には海外での武力行使を可能にするべきだ」と発言しました。
  衆議院憲法調査会の動きもすすんでいます。8月5日に開催した調査会では、自・公・民各党がそれぞれの「論点整理」、「中間報告」について発言し、討論を強行しました。これに対して共産党と社民党は「憲法改定を目的とした文書を調査の対象とするようなことは、調査会の目的を逸脱する」と批判しました。
 財界も動いています。日本経団連は、参院選後憲法改定、安全保障政策などを議論する「国の基本問題検討委員会」を設置しました。奥田会長は「政治的にも安定したこの時期が、国の基本問題を検討する好機」(15日)と発言しています。
 これらの動きの背景には改憲に向けての強いアメリカの主張があります。アーミテージ米国務副長官は21日、訪米中の中川自民党国対委員長との会談で「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と語り、今回の改定論議がアメリカの要求に沿って行われていることを露骨に示しました。
  マスメディアの動きとしては、読売新聞は、5月3日に「憲法改正2004年試案」を発表した。これは、9条に関連して軍隊をもつことを明記し、さらに「国際的な共同行動」に協力することも加えているほか、25条関連では、社会福祉と社会保障の向上を「自己の努力と相互の協力に」よることとしています。読売新聞のとどまらず、多くのマスメディアが「二大政党」の流れをすすめながら「改憲」に傾く姿勢を露わにしつつあります。

2.国民の側の動き
  世論調査によれば、憲法「改正」に対して国民の60%が反対または慎重の立場をとっており、その潜在的なエネルギーは根強いものがあります。 6月10日に大江健三郎氏など9氏が『9条の会』が結成され、『アピール』と『三つの提案』をだしました。これに呼応して早速各界、各地で賛同の運動が巻き起こっています。

3.改悪反対のたたかいの意義
 このたたかいは、私たちの生活の土台である平和を守ることをはじめ、労働者・国民の生きる権利、働く権利などすべての分野の根本にかかわるものです。第二次大戦の重い体験を経て獲得した民主憲法体制の全面解体を許すのか、それとも『世界平和宣言』としてより輝かせるのか、まさに日本の戦後史と将来をかけた課題です。同時に、憲法を地域、くらしと政治に生かす日常活動を強めることが求められています。

4.年金者組合の運動
< 運動の基本>
 年金者組合は、結成当初から平和・憲法問題を重視し、全国で多面的な運動を展開してきたが、第16回中央委員会の決定に基づき、憲法を守る運動を当面の最重点課題の一つとして位置づけ、運動を飛躍的に強化します。
 そして、運動の中心に『九条の会』の提案に応えてアピールに賛同する会をつくることと、賛同者を増やすことを据えます。

【九条の会・三つの提案】*7月24日の発足記念講演会で確認されたもの │
 @ 各地域・分野で9氏が呼びかけた「アピール」に賛同する会をつくる │
 A ビデオやポスターなどを活用し、全国津々浦々に「九条の会のメッセージ│
 を広げる B 大小さまざまな集会、学習会を開催する │

年金改悪法案の強行可決・成立に対する抗議声明
2004年6月5日         全日本年金者組合
 自民・公明両党は、6月5日の参院本会議で年金改悪法案を強行可決、成立させた。この年金改悪法は、その内容の点からも、また、成立のさせ方においても、国民を無視し、愚弄した史上最悪のものであり、全日本年金者組合は怒りをもって抗議・糾弾する。

 この改悪法は、史上最悪の内容であり、年金改革の名に値しないばかりでなく、政府・財界がねらう社会保障の破壊につながるものである。
第一に、国民年金についても、厚生年金についても、保険料の引き上げは上限のないことが明らかになった。坂口厚生労働大臣の答弁では、国民年金の保険料は、賃金の上昇に応じて「37年度31、610円」にもなる。これでは、今でも保険料を払えない人が4割にも達している国民年金のいっそうの空洞化は避けられない。また、厚生年金からの企業の脱退や非正規雇用者の増大による厚生年金加入者数の減少がすすむであろう。際限のない負担増が、国民のくらしと経済への否定的な影響をもたらすことは明らかである。
第二に、給付は、厚生年金だけでなく低額の国民年金をも、また、すでに受給中の年金をも、引き下げる。所得代替率の5割は、限られたモデル世帯での、年金裁定時における瞬間的「保障」にすぎない。それさえも、少子化が予想以上にすすむなどの場合は保障されるとはかぎらないというあやふやで無責任な想定である。これは、年金だけを支えとする高齢者のくらしを破壊し、憲法で規定された生存権を奪うものであり、今後も続く社会保障改悪の大きな一歩になる。現役世代も含めて国民の将来への不安は、いっそう増大せざるをえない。
第三に、「年金財政に穴があく」ことを、法案の成立を急いだ言い訳にしているが、法律で決められた基礎年金への国庫負担の引き上げを先延ばしにしたことこそ、年金財源の悪化を促進するものである。積立金の運用の巨大なムダと株式運用での赤字は依然としてふくれ続けている。年金の積立金は、年金改善のために取り崩す道を検討すべきである。
第四に、数百万にのぼる無年金者・低年金者の問題は一刻の猶予も許さないところにきている。65歳以上の高齢者の犯罪が激増している(NHKによる)ことは、この問題の深刻さをあらわしている。女性の低年金の問題も解決が求められている。今回の年金改悪法は、こうした課題にまったく答えようとしておらず、これでは21世紀の年金改革とはいえない。年金改革のためには、まず、土台をしっかりさせることが必要であり、消費税によらない最低保障年金制度の実現こそが今必要な改革である。

 改悪法案の成立のさせ方についても、これほど民主主義を踏みにじったやり方はなかった。
第一に、とうていまともな審議がされたといえないことである。与党は、十分な時間をかけたというが、年金問題の複雑さ、今後十数年の国民生活に影響をおよぼす重大性からいって、審議の不十分さはあまりにも明らかである。首相自身が今回の給付削減の中心テーマである「マクロ経済スライド」についてまったく無知であったことは言語同断の無責任さであるとともに、説明の不十分さも象徴している。与党は、年金改悪の重大な問題点を隠し、真実が明らかにならないうちに採決に走ったのである。
第二に、衆議院でも公聴会を開かず、参議院でも中央公聴会を開かなかったことは、重要法案の審議における通常の手続きを無視したもので許し難い。
第三に、参議院厚生労働委員会で議事日程で合意されていた共産党、社民党、無所属議員などの質問を数の暴力で突如打ち切り採決を強行したことは、前代未聞の暴挙であり、議会制民主主義を踏みにじるものである。
第四に、首相自身を含めて、閣僚・議員の保険料未納・未加入の問題が起こり、国民の年金制度と政治に対する不信が頂点に達するなかで、未納議員を公表するなど国民の不信を解消する誠実な努力をいっさいすることなく採決が強行された。また、年金保険料の不当な流用や巨額の積立金をめぐる利権・腐敗の構造、株式投資の損失とその責任についても、明確にされていない。このような中で強行可決された年金制度が国民の信頼を得られないことは明らかである。

 全日本年金者組合は、高齢者のくらしを守るため、年金改悪法案の撤回を求めて、街頭宣伝・署名、議員要請、首長要請、集会、デモ、座り込みなど、さまざまな行動を行ってきた。その中で「白紙撤回」「一からやり直せ」などの世論の形成に貢献した。強行成立させられたとはいえ、このたたかいで年金者組合が得たものも大きい。運動の広がりと世論の力で、消費税増税および財界主導の2大政党制につながる3党合意を事実上葬り去った。また、年金制度をめぐる問題点を広く明らかにした。
 全日本年金者組合は、引き続き年金改悪法を実施させないたたかいをすすめる。6月24日から始まる参議院選挙は、史上最悪の手法で強行された、史上最悪の年金改悪法に対する国民のきびしい審判をくだすチャンスである。年金者組合も、この選挙で、国民の正当な審判がくだるよう、さらに、年金制度改善の展望を開くよう奮闘する。
 いま、結成以来15年間主張し続けてきた、全額国庫負担の最低保障年金の創設の必要性はいっそう広く認識されてきている。この実現のために年金者組合は、あらたな決意で運動を強める覚悟である。さらに、これから、介護・医療の改悪が予定されている。高齢者の人権が保障され、高齢者が尊厳をもって生きてゆけるよう、年金者組合は、これ以上の社会保障の改悪を許さず、充実・改善をめざして奮闘する。


 2004年「年金改革」−内容と批判−
2004年6月5日
史上最悪の2004年「年金改革」

2004年6月5日、参議院本会議での強行採決(自民党、公明党が賛成)により、年金関連法は成立しました。
参議院選挙後の各種世論調査では、国民の8割が「今回の年金改革の白紙撤回」を求めているという結果がでています。決め方もおかしい、内容もおかしい、白紙撤回せよ、実施を中止せよ、時間をかけて審議し直せなど、野党やメディアも批判的です。
「2004年の年金改革」は、今後長期にわたり、国会の審議もなく「自動的に保険料を上げ、年金水準を下げる」という史上最悪の内容であり認めることはできません。

1.「マクロ経済スライド」導入による年金水準の引き下げ

従来、物価や賃金が上がったときには、上がった分だけ年金額も上がることになっていました。この「物価・賃金の上昇時の年金増額分」が「マクロ経済スライド」によって減らされる仕組みが公的年金制度に組み込まれました。
この仕組みには、「物価・賃金上昇率−『公的年金の加入者数の減少+平均余命の延びの3年間の平均』」が使われます。公的年金の加入者が減ったり、平均余命が延びたりすれば、年金水準は下がることになります。

すでに年金を受けている人
物価が上昇しているときには、「マクロ経済スライド」によって物価・賃金スライドが抑えられるため、本来の年金増額分が減らされます。この場合、年金の名目額以下に減ることはありませんが、年数がたつにしたがい、年金水準の実質価値は下がり続け、購買力は落ち続けます(次図参照)。物価が下がるときには、物価スライドのみで年金を引き下げます。物価が動かないときには、年金額に変更はありません。

これから年金を受ける人
新規裁定のときに、物価・賃金スライドが「マクロ経済スライド」によって抑えられ、最初の年金額が低くなります。
年金を受け始めると物価スライドが「マクロ経済スライド」によって抑えられ、年金の実質的価値が下がり続けることは同様です。

「マクロ経済スライド」の導入への疑問
@ 国民年金だけの人の年金額は、平均4万6000円ですが、2万円、3万円という低年金の人達の年金水準も引き下げられる。
A 公的年金の加入者減の原因となっている、「派遣、短時間労働など雇用の現状」「厚生年金に本来加入すべき事業所の未加入問題」などの解決策が何も示されていない。
B 少子化を理由にしているが、「生みたいが生めない」という現状への対策が示されていない。
C 少子化を理由にした、根拠のはっきりしない予測の数字を基にした計算で、あれこれ説明しているが、例えば、出生率1.32の予測が早くも狂い、1.29となった。厚生労働省は、これまで5年毎の財政再計算でも、常に予測を間違い続け、手直しをしてきた。数十年先、百年先の予測などできるのか。
D 財政面からだけの「負担増・給付減の改革」で、「安心できる老後」を国民に約束できるのか。

2.保険料の引き上げ

厚生年金の保険料は、2004年10月から、毎年0.354%ずつ上がり、最終的に2017年度以降18.3%で固定されます。
国民年金の保険料は2005年4月から、毎年280円ずつ上がり、2017年以降1万6900円(2004年度価格)で固定されると説明されています。しかし、実際には、賃金上昇率に応じてこの額は上がり、厚生労働省の試算では、仮に名目賃金が毎年2.1%ずつ上昇し続けた場合、2017年度に2万860円、2017年度に2万5860円、2037年度に3万1610円になるとされています。
いまでも、国民年金の1万3300円が高くて払えない人が大勢います。2004年度価格で1万6900円となれば、払えない人がさらに増え、結果として無年金、低年金の人が増え続けることになります。「年金の空洞化」が進み、公的年金制度の崩壊につながりかねません。

3.基礎年金の国庫負担引き上げの先送り

 政府は、義務づけられていた基礎年金の国庫負担割合の引き上げを、段階的に行なうとして2009年まで先送りしました。これは、2000年「年金改革」法の付則で、2004年までに1/3から1/2に引き上げることが決められていたものであり、許されることではありません。
 その上、その財源として2004年度予算には、年金課税の強化を盛り込みました。老年者控除の廃止と公的年金等控除の縮小は、2005年1月から実施され高齢者に多大の打撃を与えます。これまで285.5万円(配偶者控除ありの場合)まで非課税であった年金が、205.3万円から所得税がかけられます。
 翌年からは、住民税、国保保険料、介護保険料にも連動します。年金の額によりますが、10万円を超える負担増を強いられることも珍しくはありません。
 また、昨年12月の与党(自公)協議では、国庫負担引き上げ財源として2007年度には「消費税を含む抜本的税制改革を実現する」ことで合意しています。民主党は、年金財源として3%の消費税増税を公約しました。消費税の増税に反対する運動を強めることが急がれます。

4.「女性と年金」にかかわって

 「女性と年金」にかかわって私たちの要求は、女性の自立を可能にする年金権の確立です。しかし、「年金改革」はその課題に応えるものにはなっていません。

(1)短時間(パート)労働者として働く場合
 現在、労働時間が通常の3/4未満の短時間(パート)労働者は、厚生年金の適用対象とされていません。これらの労働者は、雇い主が保険料を負担しなくてよい安上がりの労働力として便利に使われています。厚生労働省案では、週20時間以上の短時間労働者について、経過措置を設けて徐々に厚生年金の加入させるとしていました。
これに対し業界からの猛烈な反対と、低賃金を強いられている短時間(パート)労働者からの反対もあり、つくられた法律では、5年を目途に検討が加えられ、必要な措置が講じられるものとする、と先延ばしされました。
短時間労働者の厚生年金適用は、女性の年金権確立の上からも、すべての事業者に社会的責任を果たしてもらう上からも必要なことです。そのためには、中小業者への配慮や、正規労働者との賃金格差の縮小など、短時間労働者の雇用条件の改善が不可欠です。

(2)離婚などの場合の年金は
 離婚などにかかわる新しい仕組みが作られました。
@ 離婚時の厚生年金の分割(2007年4月施行)
 離婚した場合、当事者の合意又は裁判所の決定があれば、婚姻期間について厚生年金の分割を受けることができるようになります。分割割合は、婚姻期間を対象とした夫婦の年金の合計の半分以内です。施行日以降に成立した離婚が対象ですが、施行日前の期間に対応する年金も分割の対象となります。
A 第3号被保険者期間の厚生年金の分割(2008年4月施行)
 この期間については配偶者である第2号被保険者の負担した保険料は、夫婦が共同して負担したものと考え、法律に明記しました。離婚した場合と、分割を適用する必要があると厚生労働省令に定められる場合、第3号被保険者期間の配偶者の厚生年金を1/2に分割できるようにします。ただし、対象となるのは、施行日以降の第3号被保険者期間です。
 すべての第3号被保険者について検討されてきたものですが、つくられた法律では、離婚やそれに準ずる場合に限られてしまいました。

(3)遺族年金の改悪
@ 年金の支給方法の変更(2007年4月施行)
 現在、遺族厚生年金と自身の老齢厚生年金との併給はできない原則です。そのため厚生年金保険料を長年払っていても無駄になることが多いことから併給を認めるべきだという要求があります。そんな背景があって行われるのがこの変更です。
自分の老齢厚生年金を全額受給した上で、現行水準との差額を遺族厚生年金として受給する仕組みにします。金銭的なメリットはまったくありません。
 こんなことでは何の解決にもなりません。併給を可能にするべきです。
A 子のない30歳未満の妻への遺族年金の有期化(2007年4月施行)
 現在遺族厚生年金は、一旦支給が決まれば妻については、死亡や婚姻などの場合を除き生涯受給できます。これを30歳未満の子のない妻については5年間の有期給付に変更するというものです。
 まともな仕事に就くことが難しく、男女の賃金格差が一向に解消されないなど、女性の自立にはきびしいのが日本の現状です。5年間で給付を打ち切るというのは大変な改悪です。
B 中高齢の寡婦加算の支給対象縮小(2007年4月施行)
 遺族基礎年金は、一定年齢以下の子のある妻以外には支給されません。そのような妻に遺族厚生年金に加えて支給するのが、中高齢の寡婦加算です。
現在の支給対象は、夫の死亡当時35歳以上65歳未満で子のない妻、と35歳に達したときに、夫の死亡当時から引き続き生計を同じくしている子がある妻です。これを夫死亡時40歳以上65歳未満に縮小するというものです。
 これも許しがたい改悪です。

5.次世代育成支援の拡充(2005年4月施行)

 子が3歳に達するまでの間、次の措置を行うというものです。
@ 保険料を免除について、これまで1歳に達するまでとされていたものを、育児休業期間の延長に合わせて3歳に達するまでとする。
A 勤務時間の短縮等の措置を受けて働き標準報酬が低下した場合、年金額の計算では子どもを産む前の標準報酬を使って算定するようにする。
 これではとても不十分です。

6.60歳を過ぎてから働く場合の年金受給

(1)60歳台前半の在職老齢年金制度の変更(2005年4月施行)
 厚生年金の被保険者として働きながら老齢厚生年金を受給する場合、従来から、年金がカットされています。60歳台前半についての停止額決定の仕組みでは、まず老齢厚生年金の一律2割をカットし、さらに年金額の8割と賃金(標準報酬月額)を足した額で計算した額を加えて決めることになっています。
 一律2割カットの仕組みを廃止し、支給停止額を老齢厚生年金の額と賃金とから算定した額のみにするものです。これによって停止額は少し軽減されます。

(2)70歳以上被用者の老齢厚生年金への給付調整の導入(2007年4月施行)
 これまで、厚生年金で加入が義務付けられているのは70歳未満です。
今度の改悪で65歳以上70歳未満の年金カットを70歳以上に拡大しました。ただし、保険料の徴収はありません。
 60歳台前半とは違い、給付調整の対象者は少なくなりますが、老齢厚生年金の額と給料の額によっては70歳以上も年金額が減らされることになります。

(3)65歳以降の老齢厚生年金繰り下げ制度の導入(2007年4月施行)
 65歳以降の繰り下げができるようになります。

7.障害基礎年金などにかかわるいくつかの改善

(1)障害基礎年金と老齢厚生年金などの併給(2006年4月施行)
 障害をもちながら働いて厚生年金保険料を払い続けても、現在、障害基礎年金を受給していると老齢厚生年金が受給できません。
老齢厚生年金又は遺族厚生年金と障害基礎年との併給を可能にします。

(2)障害基礎年金などの納付要件特例措置の延長(2006年4月施行)
 障害基礎年金などを受給するためには保険料納付要件を満たす必要があります。原則は、保険料を払った期間や免除された期間などが被保険者期間の2/3以上必要です。しかし、2006年3月31日までの特例措置があり、過去1年間保険料未納期間がなければよいことになっています。
 その特例期間を2016年3月31日まで10年間延長するというものです。

8.第3号被保険者の特例届出の実施(2005年4月施行)
 
 第3号被保険者になった場合、2001年3月まで、本人の届出が必要でした。届出を忘れた、届け出たが時効で受理されなかった、などの理由で不利をこうむる人がいます。
 これらの人たちを救済するため、今度、特例で届出ができるようにします。社会保険事務所に申し出れば時効にかかわらず届出ができます。すでに年金をもらっている人も不利を是正してもらえます。

9.国民年金未納対策など

 年金の「空洞化」は、年々深刻さを増しています。「空洞化」は国民年金だけではありませんが、2002年度、国民年金保険料納付率が前年の70.9%から一挙に62.8%に落ち込みました。政府はこれを80%まで回復させるとしています。
 しかし、納付率低下の原因は、公的年金制度に対する国民の信頼が大きく失われていること、保険料が高すぎること、不況やリストラにより人々の生活が困窮していことなどです。改悪により保険料を引き上げ、給付水準を引き下げておいて、このような対策を講じても多くを期待することはできません。

(1)多段階免除制度の導入(2006年7月施行)
 現在の全額免除、1/2免除に加えて、1/4免除と3/4免除を導入します。
1/2免除を受けても、保険料が払えず未納になる人が少なくありません。免除基準の引き下げが必要です。

(2)若年者に対する納付猶予制度の導入(2005年4月施行)
 現在、本人が低所得でも所得のある親と同居していると免除の対象になりません。20歳台について親の所得とかかわりのない「納付猶予制度」を導入します。

(3)保険料免除制度の遡及(2005年4月施行)
 現在、届け出た月の前月から免除することになっていますが、これを直近の7月まで遡及するというものです。

(4)所得情報の取得(2004年10月施行)
 強制徴収を視野に市町村から所得情報を得るための制度的対応をするというものです。

(5)被保険者への年金個人情報の通知(2008年4月施行)
 被保険者に年金個人情報を定期的に知らせるポイント制を導入します。

10.年金積立金管理運用独立行政法人」の創設(2006年4月施行)

 年金保険料の積立金は、従来、大蔵省の資金運用部に預託され、財政投融資の資金として様々な分野に投資され、預託された積立金に利子が支払われてきました。
 「2000年改革」で積立金の自主運用が決定され、積立金の運用が、大蔵省から厚生省に移ることになりました。「厚生大臣は、年金積立金を管理し、年金資金運用基金にその運用を行わせる」とされました。
 保険料は、本来、年金の給付に使うものですが、これまで、その一部が「還元融資」として福祉施設などの分野に使うとされ、この運用を年金福祉事業団が行ってきましたが、いま、グリーンピアなどを含む運用の実態が批判にさらされています。
 「2000年改革」で年金福祉事業団は解散し、年金資金運用基金がその事業を引き継ぎました。
 今回、この年金資金運用基金を解散し、2006年4月、「年金積立金管理運用独立行政法人」を創設することが決まりました。
 国会の審議やメディアによる報道で、国民が営々として積み上げてきた保険料が、長期にわたりいい加減に使われてきということが次々と暴露されました。こうしたなかで、社会保険庁長官をはじめ、数十人の民間人の投入などによる社会保険庁の改革、独立行政法人化もいわれています。名前や形を変えても、現状がかかえる問題を解決することにはなりません。
 年金積立金の運用については、@6兆円の損害(これだけではない)などの責任は A株式投資は妥当か B運営の透明性はどう確保されるのか、など、学者、投資の専門家を含む広く様々な分野から疑問が提起されています。
 積立金は、すべての国民の財産であり、財界や民間の金融機関、財務省や厚生労働省の所有物ではありません。
 積立金は、年金給付の改善と保険料の負担増を防ぐために使うべきであり、そのためにも、積立金の運用について民主的運営を要求していく必要があります。

11.だれもが安心してくらせる年金制度の改革を

 これまでに見てきたように、今度の「改革」は、100年安心の年金「改革」どころではなく、史上最悪の年金「改革」です。この「改革」のねらいは、少子高齢化の負担を保険料引き上げ・給付切り下げ・年金の課税強化・消費税増税など、すべて勤労庶民に押しつけることにあり、国と大企業の責任で生存権を保障するという社会保障の原則をこわすことにあります。民主党の年金改革案も給付は切り下げ、消費税増税を明確にしているなど、国民への負担強化という点では今回の改悪法よりいっそう大きな問題があります。
 さらに、この「改革」法の大きな問題は、日本の年金制度がかかえている深刻な問題に対する解決策が何ら示されていないことです。

(1)年金「改革」で解決されない日本の年金制度の重大問題は・・

@ くらしていけない無年金・低年金
 日本の年金の最大の問題は、くらしていけない無年金・低年金の人が多数いることです。国民年金だけの人は全加入者の47%、支給額は満額でも月に6万6千円、平均で4万6千円です。その中でも女性の低年金はきわだっており、遺族年金の低さも、一人ぐらしになることの多い女性を苦しめています。
 無年金者は全国で60万2千人(2001年度厚生労働省資料)です。25年間保険料を納めなければ、年金がもらえないという、他の国にない過酷な制度が多くの無年金者をつくっています。
 家族の実態が大きく変わりが、子どもが老親の面倒を見るという状況が困難になっているなかでは、無年金・低年金の存在は、文字通り生存権を脅かすものであり、一刻もゆるがせにできない問題になっています。この無年金・低年金を改善するどころか、さらに悪くするのが今度の年金「改革」です。
 厚生年金も決してよいとはいえません。厚生労働省は「日本の年金は欧米にくらべて遜色がない」といいますが、それは、住宅・医療・介護・交通など、生活の基本的なニーズに対する社会保障制度の分厚さが、ちがうのでとうていは比較はできません。仮に、よいとしてもそれは、大企業・ホワイトカラーの“男子”の年金をくらべた場合であって、中小企業労働者の年金は低く、20年以上働いた女性の厚生年金は平均で、約11万円という低さです。
A すすむ年金の空洞化
 厚生年金の加入者は、2000年以降、年間200万人〜300万人も政府の計画を下回っています。すさまじい勢いで、リストラ・合理化がすすみ、正規雇用の代わりに派遣・パート・臨時雇用を増やしてきたためです。中小零細企業では、厚生年金を違法に脱退する事業所が増えています。このことは、厚生年金の財政状況を悪化させ、厚生年金に入れない人たちの老後を脅かしています。
その結果、国民年金加入者は増えてきていますが、その国民年金では、年金の保険料を「払わない」「払えない」人が激増しています。国民年金の約4割の人は保険料を払っていません。保険料の徴収強化が打ち出されていますが、生活が苦しく、払えない人の対策にはなりません。
 年金制度の改悪につぐ改悪が、年金制度への信頼を失わせています。今回の年金改悪の理不尽な強行成立や、閣僚や国会議員の未納・未加入問題が、国民の年金制度への不信を決定的に増大させました。   
B 先進国の中できわだつ年金の男女格差
 日本では、年金の男女格差が大きいことがきわだった特徴です。女性の多くは、国民年金だけで、それも加入年数の少ないため低額です。
 女性の年金額を、自立した一人の人間として生きていくのに必要な額、として議論されず、男性の付属物のように扱われている状況を変える必要があります。
 当面、厚生年金の受給額の計算方法を男女で変えることを含めて、女性の年金の底上げのための施策が必要です。出産・育児・介護期間の配慮措置をヨーロッパなみにする必要があります。
第3号被保険者や短時間労働者の厚生年金加入問題も、保険料をどうとるか、給付をどう減らすかの視点から議論をするのではなく、女性の年金改善という視点から議論する必要があります。

(2)最低保障年金制度の実現が急務

@ 高まる必要性
 日本の年金制度には、上記のように、増え続ける無年金・低年金、年金制度の空
洞化、年金の男女格差など、重大な問題があり、今すぐにも解決が必要です。
 年金者組合は、創立以来全額国庫負担による最低保障年金制度の創設を提唱してきました。年金制度の空洞化や無年金の高齢者の増大が見過ごせない深刻な状況になるなかで、その必要性が高まっています。

A 国連の社会権規約委員会も勧告
 国連の社会権規約委員会は、2001年8月、社会権規約に関する日本政府の報告を審査する際、年金者組合の反論のレポートも参考にした上で、「受給適格年齢が65歳に段階的に引き上げられることから、65歳以前に退職する者のために、社会保障の利益を保証する措置を講じること」「最低年金を公的年金制度に導入すること」「事実上の男女の不平等が最大限可能なかぎり改善されること」(外務省訳)を勧告しました。これらの勧告は、国際水準からみた日本の年金制度の欠陥を鋭く指摘したものです。

B 民主・共産・社民の各党が「最低保障年金」が提案
 「最低保障年金」の問題は、今回の年金「改革」論議の中でも、急浮上してきました。民主党が年金の「一元化」案を出し、報酬比例による全国民一元化の年金制度の中で、低年金者を対象に「最低保障年金」を保障するといっています。ただしその財源として消費税増税を提唱しています。民主党の案は、無年金者への保障がないことや、国民年金の保険料の引き上げなどでも、問題が多いものです。
 日本共産党は、最低保障月額5万円からスタートする全額国庫負担による最低保障年金制度に踏み出すことを提案しています。財源は、「歳出の見直しと税制の民主的改革でまかなう」としています。月額8万円の最低保障年金制度を提唱してきた年金者組合とは、金額にちがいがあるものの、年金者組合の最低保障年金制度の提唱と基本理念で合致するもので、支持できます。社民党は月額8万円の最低保障年金制度をいっていますが、財源はあいまいです。

C 私たちが求める最低保障年金制度は・・・
 年金者組合は、全国民共通の最低保障年金の上に保険料による所得比例年金を上乗せする最低保障年金制度の実現を要求しています。最低保障年金は、全額国庫負担とし、その財源は、ムダな公共事業や軍事費の削減と大企業・大金持ちへの優遇税制の見直しでまかないます。年金改善のためには、さらに、企業の社会保険料負担率を、ヨーロッパ諸国なみに重くする(その際、中小零細企業には国から援助)ことや、他の国にない巨額の年金積立金を計画的に使うべきです。
 また、雇用の改善が年金財源の改善、少子化の改善に不可欠です。若者に安定した雇用を保障する、正規雇用を拡充し、派遣・パート労働の均等待遇をはかること、女性の労働力をまともな賃金と仕事内容で活用することが、一人一人の年金も改善するし、年金制度の財源をも改善します。

D 改悪年金法は廃止し、国民的議論のやり直しを
 私たちは、高齢者が人間としての尊厳を維持し、生活を享受する権利があり、現代社会はそれが可能な社会という観点にたちます。また、憲法25条にうたう生存権の保障は何よりも優先して考えられるべきだという観点にたって、年金制度の抜本的改善、最低保障年金制度の実現を訴えていきます。
 そのためには、今回の改悪年金法は廃止し、もう一度年金制度の国民的議論をやり直すことを求めていきます。


年金改悪法案の白紙撤回まで、全力でたたかう決議
2004年5月25日        全日本年金者組合5.25中央総行動参加者
 年金改悪法案は許さない。最低保障年金をつくれ。私たちは、仲間たちの熱い思いをたずさえ、一歩も退かない決意で、本日、全国からここ国会前に集まりました。 保険料の歯止めのない引き上げ、給付水準50%確保のウソ。重大な問題点があらためて明らかになるなかで、100年安心の年金制度改革案はまやかしであることがいよいよはっきりしてきました。
 深刻化する年金制度の空洞化は放置し、平均月額4万6千円の国民年金をも、さらに減らそうとする改悪案は、高齢者の生きる権利を奪うものにほかなりません。
 積立金の無責任で勝手放題な使い方、歴代社会保険庁長官の交際費への流用、株式投資による莫大な損失などの責任は明らかにされず、国庫負担2分の1への増額は先のばしにされています。本格的な雇用対策、少子化対策もすすめられていません。
 小泉首相をはじめとする閣僚・党首・国会議員の国民年金の未納・未加入問題で、国民の怒りは頂点に達しています。マスメデイアはいっせいに、改革案の出直し、白紙撤回の主張を強め、各種世論調査でも、「改革法案は成立させるべきでない」という意見が7割にいたっています。長い時間をかけて営々と積重ね、ひろげてきた私たちの主張が、まさに国民の多数を占める情勢になっています。
 廃案の展望は大きく広がっています。私たちは、全国津々浦々から2000人が集まったこの力をもとに、ひき続き廃案をめざして全力をあげます。さらには、仲間を増やし、イラク占領・有事法制反対、消費税増税反対の要求とも結んで、参議院選挙で政治の情勢を変えるたたかいにつないでいきます。
 以上、決議します。

いま、日本の年金制度の問題点は

年金制度の3階立て構造 
 日本の年金制度は、いま、基礎年金(国民年金)だけの人、基礎年金(1階)の上に、民間サラリーマンの報酬比例部分の厚生年金や、公務員などの共済年金を上乗せする2階部分を持っている人、さらに、厚生年金基金や適格退職年金などの企業年金と共済年金の職域担当部分など3階部分も持っている人とに分かれています。

 
増える非正規雇用者
 
いま、日本では、リストラ・倒産で中高年の失業者が増える一方で、特に青年では正規の常用雇用者が減って、アルバイトや臨時、派遣などの非正規雇用者が増えています。こうした労働者の多くが、厚生年金などに加入できないでいます。

少なくなる厚生年金加入

 最近の不況で企業倒産など厚生年金の適用事務所自体も減っています。さらに、経営が苦しくて、適用事務所であっても加入していない零細企業が1998年度で80万件を超えているといわれています。
 また、総務庁の統計によると、常用雇用者が4000万人を超えているのに、厚生年金への加入者が3,300万人、共済年金加入者が534万人で、残りの166万人は、低年金・無年金になる危険をもっています。

生活できない年金水準
 国民年金だけの人は平均4万円台の年金です。この金額は生活保障の最低限度額よりも低いのです。しかも、年金の男女差が大きいのが日本の特徴です。厚生年金では、男性が平均約20万円に対して、女性はたった11万円です。
 これでは、憲法が保障する「だれもが健康で文化的な生活を営む」にふさわしい水準とはいえません。

 深刻な年金の空洞化
 934万人が無年金・低年金のおそれ
不況の中で、零細企業、個人事業主、アルバイト・臨時で働く人など、年金の保険料が高くて払いきれない人が大量に増えています。国民年金加入者の約4割の人が、滞納や免除者になっており、こうした人たちの多くが、無年金または低年金者になる危険があり、その数は934万人に達するといわれています。これはたいへん深刻な事態です。政府は、国の責任ですべての高齢者が生活できる年金を保障する必要があります。
区分 人数
65歳以上で年金の無い人 約 55万
国民年金だけど未加入の人   99万 
専業主婦で届けていない人    3万
国民年金保険料免除の人  400万  
国民年金保険料未納の人  377万
合計  934万

高齢者が豊かな老後をおくるために
年金者組合は要求しています 


★ 「最低保障年金制度」をつくること

  1.すべての国民が保険料なしで支給される「最低保障年金制度」をつくること
  2.「最低保障年金」に要する費用は、一般財源によって全額国庫負担とすること
  3.現在の国民年金、厚生年金、共済年金は社会保険形式とし、「最低保障年金」に上積みされること
  4.「最低保障年金」は一人8万円程度とし、安心して生活できる水準とすること
  5.支給開始年齢は原則60歳からとすること
  6.「最低保障年金」に要する財源は、むだな公共事業の見直し、軍事費の縮小など国の予算を組み替えることで創出すること

★ 年金制度に関する当面の改善要求
 
 <国民年金について>
  1.基礎年金に対する国庫負担をただちに現行の3分の1から2分の1に増額すること
  2.老齢福祉年金を当面8万円に引き上げること
  3.老齢基礎年金は60歳から満額支給すること
  4.遺族基礎年金は厚生年金・共済年金に準じて大幅に改善すること
  5.20歳以上の学生については特別の保険料免除制度をつくること
  
 <厚生年金・共済年金について>
  1.脱退手当金を返済すれば、すべての公的年金にその期間を資格期間に合算し、年金を支給すること
  2.年金の支給開始年齢を65歳に引き上げず、年金水準の再引き下げを行わないこと
  3.低い年金額は大幅に引き上げ、生活できる年金にすること
  4.遺族年金は大幅に改善すること
  5.保険料の負担割合を労働者3、使用者7とし、中小企業については、労働者3,使用者5、国2とすること
  6.女性の年金に「最低保障額」を設けるなど、著しい男女格差を縮小すること

 <共通して>
  1.年金の受給資格期間を10年程度に短縮すること
  2.保険料の引き上げは行わないこと
  3.年金の併給調整を廃止すること
  4.離婚による年金権を保障すること
  5.年金の支給は毎月1回とすること
  6.失業給付中の年金停止を行わないこと

★ 高齢者が安心して医療を受けられるために

  1.高齢者に新たな負担を強いる医療保険制度の改悪に反対する
  2.医療無料化を復活させ、対象年齢を65歳まで拡大すること
  3.入院給食を全額健康保険適用にもどすこと
  4.70歳未満の高齢者に自治体として老人医療費助成を行い、薬剤費の窓口徴収を行わないこと
  5.国・自治体は必要な援助をし、高齢者が安心して入院できる病院・病床を増やすこと
  6.保険でよい歯科医療を保障すること
  7.補聴器購入を保険適用とすること

★ 介護保険制度の改善を
 
  1.国や自治体はサービスの提供を民間まかせにせず、必要な体制を整備すること
  2.低所得の保険料・利用料の減免制度を確立すること
  3.待機者が9万人もいる特別養護老人ホームの増設を急ぐこと
  4.以前から特別養護老人ホームに入所している人は審査の如何にかかわらず追い出すようなことはしないこと
  5.市町村独自の福祉サービスは後退させないこと
  6.介護保険制度の実施・運営は住民代表を含めた運営委員会で協議すること

★ 高齢者が暮らしやすい住宅とまちづくりを
  
  1.住宅は福祉との理念に立ち、高齢者の住宅を保障し、居住水準を高めること
  2.公営ケアつき老人専用住宅の建設をすすめること
  3.高齢者住み替え家賃補助制度を拡充すること
  4.高齢者のための増改築の住宅ローン減税制度を設けること
  5.高齢者が住みやすいバリアフリーのまちづくりをすすめること

★ 高齢者の雇用を保障するために

  1.中高年への人減らし合理化をやめ、雇用の拡大を促進すること
  2.働きたい高齢者に雇用の場を公的に保障すること
  3.年齢による雇用差別を禁止すること
  4.シルバー人材センターの労働者の賃金を大幅に増額し、社会保険を適用すること
  5.高齢者事業団などへの公共事業の発注を増やすこと



 2004年「年金改革案」閣議決定に抗議する声明
2004210 全日本年金者組合中央本部
 210日、政府は、「年金改革」法案を閣議決定し、国会に提出しました。

1.「改革法案」は、2017年までの毎年の保険料引き上げと、給付水準を毎年引き下げるための仕組み(「マクロ経済スライド」)をつくり、保険料を35%も引き上げ、16%も給付水準引き下げる、今後20年にも及ぶ年金大改悪を一挙に決めてしまおうとするものです。

 また、政府は、昨年4月からの0.9%に続き、物価スライドによる0.3%の年金額引き下げを計画しています。国民年金だけの人、900万人の平均年金額が45千円です。これらの低年金者を含めて年金水準が大幅に引き下げられます。

 2.法的に義務づけられている基礎年金の国庫負担率2分の1への引き上げについては、その大部分を先送りしました。

 3.しかも、自公政権は、国庫負担の引き上げ財源を口実に、老年者控除の廃止と公的年金等控除の縮減を来年度予算案に盛り込みました。年金改悪による年金水準の引き下げに先立って、年金額を実質的に大幅削減しようというものです。

また与党協議が、国庫負担引き上げ財源を口実に、所得税の定率減税廃止、消費税増税を合意したことも見逃すことができません。この十数年間積み重ねられてきた大企業・大金持ち優遇税制などには指一本触れることなく、負担は、もっぱら庶民に押し付けるというものです。

4.政府は、少子化による「支え手の減少」を年金改悪の理由にしています。しかし、「支え手」を減らしているのは、ほかならぬ政府自身です。政府の失政・悪政が経済を停滞させ、失業や営業不振を招き、リストラの奨励や、労働法制の改悪が短時間労働者・派遣・業務請負などの不安定雇用を増やし、「支え手」を減らしています。また、日本では女性がまともな労働に就く機会が少なく、その労働力が十分に活用されていません。若者をはじめとして現に存在する就労の機会を与えられていない労働力と、女性の労働力が生かされるなら、年金制度を改悪する必要はありません。

5.年金積立金の運用損失の累計が、2002年度末現在、6兆円を超えたことが伝えられています。積立金の株式投資を取りやめ、年金の改善のために計画的に使うべきです。

 6.政府の「年金改革」法案は、保険料の引き上げと、給付水準の引き下げにより公的年金制度に対する国民の信頼を損ない、年金の「空洞化」を加速させるものです。女性の自立をめざす「女性と年金」についても短時間労働者の厚生年金適用問題を含めて先送りしました。

 7.いま、年金の「空洞化」は、一日も放置できない状態です。度重なる年金改悪により、公的年金制度への信頼が損なわれていること、国民各層に広がっている所得の低下、貧困化がその原因です。「空洞化」が国民年金だけでなく、厚生年金にも広がっていることは、事態を一層深刻にしています。

 私たちは次のことを強く要求し、その実現のために全力をあげて闘うことを表明します。

一、  公的年金制度のみならず、社会保障制度を崩壊に導く「年金改革」法案を、ただちに撤回すること。

二、  国民が安心して暮らせる年金制度とするため「最低保障年金制度」の導入を含めた国民的な議論を第一歩からやり直すこと。



年金大改悪を含む04年度予算案の閣議決定に対する抗議声明
  2003年12月25日               全日本年金者組合 中央執行委員長   森  信幸
 政府は24日、来年度予算案の閣議決定をしました。これは、重大な年金改悪案を含むものであり、全日本年金者組合は、この決定に対して怒りをもって抗議をするものです。
 年金にかかわっては、保険料の連続引き上げ、給付の自動切り下げ、課税強化による給付額の大幅切り下げという、何重にも国民と高齢者を苦しめる内容が含まれています。とりわけ、老年者控除の廃止、公的年金等控除の縮小など、課税の強化による受給中の年金への被害は甚大です。生活ぎりぎりの年額250万円でも、9万円を越える増税になって年金が減らされ、わずか170万円の年金で細々とくらしている単身者もあらたに課税対象になります。しかも、この上に、0.2%〜0.4%の物価スライドによる年金の減額が加わります。まさに高齢者いじめとしかいいようがありません。一方で、年金への国庫負担の2分の1への増額を先送りにすることで、政府みずからは、法律による決定をやぶっています。 
 国民の生活を守るべき政府が、大企業は優遇し、イラク派兵などには莫大な予算を使いながら、国民には重大な負担を押しつけています。不況にあえぐ労働者や自営業者、高齢者のくらしをいっそう破壊に追いやろうとしていることは、とうてい認められません。また、年金改悪をはじめとする国民への負担増が、日本経済をいっそう悪化させることは明らかです。
 私たちは、国民の生活を守り、すべての高齢者に安定した高齢期を保障するためにこそ、優先して予算を使うことを求めます。年金改悪・税制改悪案は、白紙撤回することを要求します。いまこそ、消費税増税によらない一般財源と大企業の拠出による最低保障年金の創設を真剣に検討すべきです。
 全日本年金者組合は、この予算案で示された年金大改悪は断じて許さず、すべての高齢者が安心してくらせる年金制度の抜本改善を求めてたたかうものです。


厚生労働省「年金改革」案についてこう考えます
20031119日      全日本年金者組合

2004年「年金改革」の厚生労働省原案が発表されました。早急な給付水準の引き下げを求める財界に歩み寄った「坂口試案」よりさらに後退する内容となっています。「政府与党協議会」を経て政府案がまとめられ、来年早々の通常国会に提案するとされています。政府案作成に向け、財界の更なる攻勢が予想されます。「改革」案の問題点と、私たちの見解を明らかにします。

1. 保険料引き上げと、給付水準引き下げを自動的に行う仕組みの導入

「年金改革」の最大のねらいは、保険料を毎年引き上げたうえで固定し、給付水準をその範囲内におさえる、「保険料固定方式」の導入です。これまでのような5年毎の法律改正なしに、毎年自動的に年金改悪を進めることのできるこの仕組みの導入は、政府にとって好都合なものです。これを許すなら、私たちは、将来に大きな禍根を残すことになります。なんとしても阻止しなければなりません。
 
厚生労働省案は、現在13.58%(労使折半)の厚生年金保険料率を毎年引き上げて20%(2022年)に、国民年金保険料を17,300円(2011年)にして固定するとしています。また、給付水準は、現在59%の所得代替率を50%以内に自動削減するというものです。保険料率を1.5倍に引き上げ、給付は、15%も削減するというものです。
 
史上最悪のこのような改悪は、老後の不安を増大させ、公的年金制度への信頼をますます損なうものです。高すぎる保険料の引き上げが、「年金離れ」をさらに促進させることになりかねません。
 
(注)所得代替率:夫婦2人の満額基礎年金と平均賃金で40年間働いた夫の報酬比例年金の、男子平均手取り賃金に対する割合

2. 受給中の年金、既裁定年金はもっと深刻

受給中の年金、既裁定年金は、実はもっと大きな削減を受けることになります。2000年改定以来、賃金スライドが停止されているからです。
 
現在、新規に裁定される年金は、賃金と物価の上昇率によって増額されます。既裁定年金が増額改定されるのは、物価上昇率だけです。年金水準を自動的に削減する「マクロ経済スライド」と称する手法では、これらの上昇率から、公的年金の被保険者の減少と平均余命の伸びから算出した「調整率」を差し引いて「調整」するものです。
 
現在、賃金も物価も上昇していないので理解しにくいのですが、このままの状態がこの先ずっと続くとは考えられません。厚生労働省の試算は、2008年以降、賃金1.1%、物価1%の上昇を前提にしています。この場合、毎年1.1%づつ差が開くことになります。その差は、80%以下に留めることになっていますが、既裁定年金は、最大、所得代替率40%まで引き下げられることになります。
 
既裁定年金は、急激な「調整」によって、物価が上がってもほとんど年金額が上がらないことになります。そのうえ、厚生労働省原案では、賃金スライドは、上がったときには停止するが、下がったときは、実施するというとんでもないものです。すべての人が、既裁定年金者になります。これは全員の問題です。厚生労働省案として説明されている水準より、実際は、もっと低い年金水準にするということです。

3. 年金財政の「危機」は政府の責任

小泉構造改革は、「社会保障給付費の伸びの抑制」を強調し、「世代間のバランス」を口実に給付の引き下げを推し進めようとしています。年金財政の危機をつくりだし放置してきたのは、政府の責任です。高齢化社会にふさわしい税金の使い方を要求して運動を進めなければなりません。

 1) 雇用を増やして、公的年金制度の基盤を強化すること

少子化による「支え手の減少」を口実に年金改悪を進める政府が、悪政、失政を重ね、リストラの奨励、労働法政の改悪、サービス残業の放置などにより、失業・事業不振、不安定雇用の増大など、年金の支え手を減らしています。制度の基盤を堀くずしているのは、政府自身です。
 
劣悪な労働行政により、女性の労働力が生かされていません。女性労働者の過半数がパートなどの短時間労働者で占められるという状態です。若者の雇用も深刻な状態です。現在ある労働力を有効に生かせていないことが年金財政を困難にしている原因の一つです。
 
政府は、雇用政策を根本的に改め、働く意思と能力のある全ての人たちに安定した仕事を与え、国民の生活の安定とともに、年金をはじめとする社会保健制度の基盤の安定を図るべきです。

 2) 基礎年金の国庫負担をすぐに引き上げること、その財源を消費税増税などに求めないこと

国庫負担率の2分の1への引き上げは、2000年改定で、法律に明記された問題です。法治国家の政府であるならば、法律に従ってすぐに実施するのが当然です。
 
ところが厚生労働省原案は、引き上げを前提に試算を示しながら、「筋道をつける」とするにとどまっています。小泉首相は、引き伸ばしを示唆し、財務省は、引き上げに難色を示しているだけでなく、「高額所得者」の基礎年金の減額さえ要求しています。
 
国庫負担率の2分の1への引き上げは、公的年金制度への税金投入の第1歩として、どうしても実現しなければなりません。
 
財界を中心に国庫負担率引き上げの財源として、消費税増税の動きが強まっています。また、選挙戦を通じて消費税増税の機運が作られてきたことも重大です。消費税は、貧しい者ほど負担が重い最悪の逆進課税です。絶対に許すことはできません。
 
また、定率減税の見直しが浮上してきたことも見逃せません。定率減税は、総額2.5兆円にもなるもので、その見直しは、大変な庶民増税です。これまた許すことのできないものです。

 3) 年金積立金の株式投資をやめ、制度の維持改善に使うこと

年金積立金の株式運用で、損失赤字の累積額が、6兆円を超えたことを厚生労働省が明らかにしています。国民年金と厚生年金の積立金は、現在、約147兆円あるといわれています。厚生年金では、給付費の約5年分です。
 
厚生労働省は、賦課方式を基本とした方式で公的年金が運営されていると説明しています。賦課方式は、現在の保険料で現在の年金を賄う方式です。従って、多額の積立金を必要としません。現に、先進諸国では、数か月分というのが普通です。制度の維持発展のために取り崩して使うのは当然です。
 
厚生労働省案で、積立金の取り崩しを言い出したことは注目すべきですが、何十年も先のことであり、私たちの要求とは程遠いものです。

 4) 税金の集め方と使い方を改め、社会保障の充実を図ること

1989年に消費税が導入され、97年に5%に増税されました。それと引き換えに、86年まで70%であった所得税の最高税率は、99年にはついに37%にまで引き下げられました。同じく86年まで43.3%だった法人税基本税率は、99年には、30%まで引き下げられています。このような大企業・大金持ち優遇税制を改めれば、莫大な財源が生まれます。
 
また、税金の使い方では、約40兆円の公共事業費は、国民総生産比で、ドイツ、イギリスの約3倍であり、国際的にも飛び抜けています。約5兆円の軍事費は、世界第2位です。この莫大な予算のほんの一部を削減すれば財源は作れます。
 
高齢化社会にふさわしい予算の使い方に切り替え、年金をはじめ、社会保障を充実させるべきです。

 5)「最低保障年金制度」を創設すること

国民年金被保険対象者のうち、保険料免除者、未納者、未加入者の保険料を払っていない人が、40%を超えています。度重なる改悪で、制度に対する国民の不信が高まっていることと、不況・リストラなどによる失業・事業不振など、国民の貧困の増大がその原因です。
 
若者は、不況・リストラのしわ寄せを受け、学卒失業者・フリーターは増加を続けています。彼らの「年金離れ」を誰が非難できるでしょうか。このままの状態が続くなら、将来、大量の無年金・低年金者が作られることになります。そようにしないため、全額国庫負担による「最低保障年金制度」を作ることが必要です。
 
政府は、2004年「年金改革」の中で、年金「空洞化」を解消し、国民に老後の安心を与え、公的年金制度への信頼を取り戻すため、この制度を創設するべきです。その導入は、第3号被保険者制度問題など、多くの懸案を同時に解消することになります。

4. 年金生活者を脅かす年金課税の強化

去る6月、政府税制調査会は「中期答申」を発表し、公的年金等控除、高齢者控除などの縮小・廃止を強く打ち出しました。同調査会は、来年度予算の編成期を前に、これらの縮小を「来年度税制改革」に盛り込む構えです。
 
モデル年金23,6000円が示すように、現在の給付水準は、課税の対象になるほどのものではありません。年金課税の強化は、最低限の生活費に課税するものであり、絶対に容認できるものではありません。水準を下げた年金を税金でさらに削減するという厚生労働省や財務省の考え方には、怒りを覚えます。
 
一部の特権的な高額所得者には、年金への課税強化ではなく、所得税の累進税率をもとに戻して応分の負担を求めればいいのです。

5. 女性の年金について

女性にかかわる年金制度についても、いくつかの改定が提案されました。短時間労働者に対する厚生年金の適用は、週20時間以上の者を対象とすることになりました。保険料と給付の問題、医療保険への影響など、様々な問題が残されています。
 
年金分割については、第3号被保険者期間の保険料納付記録を分割し、離婚時には夫婦で合意があれば、年金を分割するとしました。しかし、今後の課題とする部分がたくさん残されています。
 
遺族年金制度については、自分自身の老齢厚生年金を基本とし、現行制度との差額が遺族年金として支給されることになりますが、支給額は変わらないので大きな意味はありません。20歳台の遺族年金を5年間の有期支給とするのは、女性にきびしい雇用情勢を考えると問題があります。いずれにしても、最大の問題は、年金が低いことです。年金の実質的な男女格差を改善することが大切です。
 国民不在の「年金改革」に反対し、国民に老後の安心を与える、一般財源による「最低保障年金制度」の確立をめざし、全日本年金者組合は、要求が一致する団体や個人と力をあわせて奮闘するものです。



厚生労働省年金「改革」案に対する抗議声明

2003年11月18日     全日本年金者組合中央執行委員会


 昨日、厚生労働省は、来年からの年金「改革」案の内容を明らかにしました。予想されていたように、保険料を毎年引き上げていって、20%で固定し、給付は、少子化などの進み具合によって自動的に切り下げていくというものです。保険料は1.5倍の引き上げ、給付は15%もの引き下げという大変な改悪を、将来に向けて自動的に行っていくというしくみの導入は、絶対に認めるわけにはいきません。しかも、給付の引き下げを財務省や財界などの要求にしたがって前倒しにし、短期間で完了させるとしたことは、今まで出されていた案よりもさらに大きな改悪になります。高齢者の長寿がそのまま年金の削減につながるようなしくみも問題です。今でも生活していけない低い水準の国民年金をも同様に切り下げていくことは、「公的年金にふさわしい給付水準を確保する」とした厚生労働省の主張がまったく現実を見ないものであることを証明するものです。
 すでに受給中の年金も、同様に切り下げられ、しかも、受給中の年金については、賃金が上がったときは上げず、賃金が下がったときだけスライドさせて切り下げるとしたことは、重大であり納得できません。
 厚生労働省は、この「改革」で年金への不信や不安を解消し、将来にわたって持続可能な制度にすると言っていますが、これでは老後の不安は増すばかりです。現役労働者は保険料の重い負担に苦しむことになります。 国民年金では、今でも多い保険料を納められない人をいっそう増やすことになります。
 そもそも少子化のために、改革はやむをえないということですが、リストラ・倒産・就職難を加速させ、年金財政を悪化させてきたのは政府自身の責任です。株式投資の失敗によって年金積立金の赤字を累積6兆円余も増やし、あるいは無責任な保養施設の経営で赤字を増やしたのも、政府の責任です。こうした政府の責任をすべて労働者と高齢者に転嫁し、負担を押しつけることは許せません。年金財政の改善をいうなら、まずリストラをやめ、雇用を増やすべきです。世界の中でも際だった雇用における男女差別をやめさせ、女性にまともな雇用と賃金を保障すれば、年金財政は大きく改善されます。最悪の状態の雇用の状況を21世紀のなかばまでそのままに放置することを前提とした、今回の「改革」案は、改革の名に値いしないものです。政府の責任でただちに法律どおり国庫負担を2分の1にすべきです。その際、最悪の逆進課税である消費税を増税することは認められません。女性の年金問題についても、女性の低年金という最大の問題の解決になっていません。
 国民年金の徴収強化も打ち出されました。年々増える保険料未納者の多くが、今日の生活に困っている人たちです。いたずらに徴収を強化することは、何の解決にもなりません。全日本年金者組合は、すべての高齢者に安定した高齢期を保障するために、国庫負担と大企業の拠出による最低保障年金の創設を求めています。
 全日本年金者組合は、労働者と高齢者の生活を守る立場から、年金の大改悪に反対し、年金の抜本改善を求めてたたかうものです。



    日経新聞で報じられた
    「支給中の年金4%削減を求めた」ことに対する抗議


      2003年8月13日            全日本年金者組合 中央執行委員長  森 信幸

財務大臣 塩川正十郎殿

 本日の日本経済新聞は、財務省が2004年の年金改革で、支給中の年金額を一律4%削減することを求めたと伝えています。もし事実なら重大なことです。
 私たちは、このようなとんでもない年金削減が論じられていること自体に大変驚き、言いあらわせないほどの怒りを感じるものです。
 年金額については、この春、物価スライドを理由に0.9%切り下げられたばかりです。医療費が上がり、介護保険料が上げられるなかで、高齢者の生活は厳しさを増しています。年金だけが命綱である高齢者にとって、これ以上の年金の切り下げはとうてい堪えうるものではありません。標準世帯での月額1万円近い切り下げは、常識外の暴論です。平均4万5千円しかない国民年金受給者にとっては、これはまさに生活破壊に直結します。 
消費水準指数の下落を加味するということですが、ぎりぎりの消費水準をさらに切り下げていくことは、高齢者の生活破壊のみならず、日本経済の際限のない下落スパイラルを政府みずからが創り出そうとしていることにほかなりません。
 私たちは、「支給中の年金4%削減」要求に対して怒りをもって断固抗議し、このような暴論を即時撤回するよう求めるものです。

 
女性と年金にかかわる要請書
2003年5月8日
        全日本年金者組合 中央執行委員長  小島 宏
厚生労働大臣 坂口 力 殿

 政府は2004年の年金改革にかかわって、大きな課題として女性の年金にかかわる問題をとりあげ、社会保障年金部会などで論議をすすめています。
 女性のライフスタイルの変化に対応した年金制度の改革が必要とされていますが、日本では、雇用・社会慣行・家族的責任などにおいて男女格差が大きく、それがすべて女性の低年金につながっています。働く女性が増えたとはいえ、その多くがパートタイム労働など劣悪な賃金で働いています。この劣悪な賃金と労働条件が放置されたままでの年金改革では、真に女性の自立や地位向上にはつながりません。年金の個人単位化は基本的には望ましい方向ですが、その前提条件として、厚生労働省は、女性の雇用条件の改善、男女を含めた労働時間の短縮や育児・介護に対する支援など、女性が男性と平等に働き続けられる条件整備に真剣な努力をそそぐべきです。
 パート労働者を厚生年金に適用させるにあたっては、すでに必要以上に搾取されている賃金から保険料を負担させるのは過酷であるという認識をもち、国や企業の負担を増やすなど十分に配慮する必要があります。また、給付が低くなりすぎないような配慮も必要です。第3号被保険者の保険料にかかわる問題については、厚生労働省は「方向性と論点」で4つの見直し案を出していますが、いずれもあらたな矛盾を生むことになりかねないものです。現実に収入のない専業主婦から保険料をとることは、どういうとり方をしても、勤労者世帯の負担増をもたらします。また、専業主婦の基礎年金を削減することは現状でも低年金の女性にとっていっそうの困難をもたらすものであり問題外です。 
 日本では、他の先進諸国にくらべても男女の年金格差が大変大きく、ひとりぐらしをすることが多い高齢女性の生活を支えるのに十分な年金額になっていないのが特徴です。いま、低年金・無年金の人が増えていますが、その多くが女性です。すべての高齢者の生活保障をすることが、生存権にかかわる社会保障の基本だという観点で年金改革を行うべきです。消費税増税によらない全額国庫負担の最低保障年金の創設は女性の年金問題のもっとも有効な解決法です。
 2001年8月に出された国連社会権規約委員会の最終見解では、「年金制度に最低年金を導入すること」「年金の実質的な男女格差を可能なかぎり最大限是正すること」という勧告が出されました。年金改革については、この国連の勧告を真摯に受けとめ、高齢期の女性の生活の改善をはかる方向で結論を出されるよう下記の事項を要請します。

                                     記

 1 パート労働者への厚生年金加入については、新たな保険料負担が大きくならないよう配慮すること。健康保険の被扶養者制度は当面変えないこと。
 2 第3号被保険者の問題については、無職の妻および夫に新たな保険料負担を求めないこと。また、第3号被保険者の基礎年金を減額しないこと。
 3 遺族年金については、現状では高齢女性のくらしの支えであり、これは縮小しないこと。また、現行で18歳以下の子どもがいないかぎり給付のない遺族基礎年金の給付条件を改善すること。
 4 女性が出産・育児および介護のために離職する場合、一定期間は保険料納付免除  とし、年金給付に反映させるなど、配慮をすること。また、第1号被保険者(自営)についても、出産・育児および介護の期間の配慮を行うこと。
 5 厚生年金の脱退手当金を返還して、年金給付に反映できるようにすること。
 6 国民年金受給資格の25年は、欧米にくらべても長すぎ、女性の無年金の原因になっているので、これを10年程度に短縮すること。
 7 女性の低賃金がストレートに年金の男女格差に反映している事実を緩和するため報酬比例部分の計算方法を男女格差を是正する方向で変えることなどを検討すること。
 8 第3号被保険者問題をはじめとする女性の年金問題を解決するためにも、全額国庫負担による最低保障年金制度を創設すること。
                                                                        以上

年金切り下げへの抗議声明
 2003年3月28日    全日本年金者組合 中央執行委員長  小島 宏 
 衆議院に続いて参議院でも年度末ぎりぎりで十分な審議も経ないまま、自民・公明・保守新党さらに民主党までもが、「物価スライドによる年金削減特例法」を賛成多数で強行可決したことに、怒りを込めて抗議するものです。
 昨年10月からの高齢者医療費の自己負担の定額制から1割負担への改悪、本年4月からの介護保険料の見直し引き上げ、併せて年金支給額の削減と3重の負担増を押しつけるもので、とうてい納得できるものではありません。
 国民年金で月額4万円にも満たない人が520万人も存在し、不況の深刻ななかで、最低限度の生活も保障されないもとでの厳しい仕打ちです。
 厚生労働大臣は、“制度が成り立つためには、助け合うことが必要だ”とか”若い労働者の賃金も下がっているので高齢者も応分の我慢を”などと国会で答えています。年金支給額を0.9%削減のために国庫支出を3,700億円カットする反面、年金積立金の運用で2002年度の9ヶ月間で2兆1千億円もの損失を出し、累積で5兆円を超える赤字をつくりながら、何ら反省もなく、責任の所在も明らかにしない態度に、はげしい怒りを禁じ得ません。
 この年金削減の処置は、年金受給者2,950万人を直撃するだけでなく、児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当、原爆被害者医療特別手当などにもスライドして影響が及び、高齢者・弱者の蒙る被害は甚大であります。
 4月からの現役労働者の医療保険自己負担の3割負担の凍結法案についても野党の共同提案を受けながら上程せず、委員会付託をも拒否する自公保与党の対応は、3,000万の署名に寄せた国民の声を踏みにじるもので、必ず厳しい反撃を受けるでしょう。
 年金者組合員6万の仲間は引き続き団結し、2004年の年金大改悪の攻撃をはね返し、「最低保障年金制度」実現をはじめ社会保障充実に向けて、まわりの高齢者をはじめ、幅広い労働者・勤労市民と共同し、広大な闘いの輪を構築することを決意するものです。
 ときあたかも4年に一度の統一地方選挙が火ぶたを切りました。高齢者に苛酷な仕打ちを強いた自民党・公明党・保守新党や民主党などに、厳しい審判をくださなければなりません。
 不況を克服し、安心して暮らせるまちづくりをめざし、社会保障改善の闘いを前進させながら、私たちの要求を支持してくれる政治勢力の前進のために奮闘することをここに表明するものです。
 
年金があぶない!年金額の切り下げは許せない!
 来年度の予算編成に際して、財務省と厚生労働省は、物価スライドの凍結を解除し、来年度は消費者物価下落分を反映して年金給付額を切り下げることで合意したことが報道されています。過去3年間の下落分(1.7%)および今年の下落見通し分(0.6%)について具体的にどう扱うかは今後検討するとしています。
 医療改悪、社会保障のあいつぐ切り下げ、介護保険の重い負担に加えての、この措置は、ただでさえ低い年金に頼り、生活苦にあえぐ高齢者をいっそう追いつめることになります。史上はじめて実際に受給している年金額が切り下げられることになります。このことは、本格的な年金の切り下げの突破口ともなるものです。
 全日本年金者組合は次のような反対声明を、首相官邸、厚生労働大臣、財務大臣に送付しました。
 なお、厚生労働省は、社会保障審議会年金部会で2004年の年金改革について現在論議をすすめており、ここでもすでに年金をもらっている人の年金額が切り下げられる制度が導入される危険性があります。年金部会は10月にも論点の整理という形で論議のまとめをしようとしています。私たちは、注意深くこの行方を見守り、年金額の切り下げは断じて許さない運動をすすめたいと思っています。

厚生労働省「年金改革の骨格に関する方
向性と論点」についての検討と批判(案)

2003年1月 全日本年金者組合・年金切り下げと社会保障改悪に反対する闘争本部

 厚生労働省は、12月5日、2004年の年金改定に向けての、「年金改革の骨格に関する方向性と論点」を発表しました。これは、年金制度への不安感や不信感の解消、少子高齢化に対応する安定した制
度、給付水準と現役世代の保険料負担のバランス、また、特に女性などの働き方の変化への対応、などから制度の改革が必要になったとして、「20%での保険料固定方式」を選択肢の一つとして大きく押し
出す内容になっています。
 この「方向性と論点」について、年金者組合は次のように考えます。
 
不安を増幅し、政府の責任を放棄する保険料固定方式
 「方向性と論点」の最大のポイントである保険料固定方式は、保険料は20%まで引き上げながら、給付額は社会全体の経済情勢や少子化の進み具合によって自動的に調整するというものです。少子化の進
行にともなって減額されるということは明らかですが、どこまで下げられるのかはわからないというのが実情です。これでは、不安や不信を解消するどころか、ますます不安を深めるものにほかなりません。
この方式はまた、高齢者の生活できる給付水準をどう確保するかを考えないことで、憲法第25条にしたがって国民の生活を保障する義務を負う政府や資本の責任をまったく都合よく放棄するものです。少子
高齢化を口実に、労働者の負担は増やし、給付はどこまでも切り下げるというのが、この改革の「方向性と論点」の中心であり、強く反対せざるをえません。
 
支え手を減らしているのは政府の責任
 そもそも、リストラ・倒産・失業の加速で労働者の数を減らし、年金の支え手を減らしているのは、政府自らの政策によるものです。まともな雇用を増やすこと、女性の労働条件を改善することが先決で、
一方でこれにまったく相反する政策をすすめておきながら、年金財政の窮乏をいうことは納得できません。また、保育所の整備や、職場での男女平等、働らく権利の保障などを怠って少子化を加速させてきた
政策を反省し、ただちに改めるべきですが、その努力はまったくといっていいほどされていないのが現状です。こうしたなかでの、将来にわたる年金改悪は、とうてい容認できるものではありません。
 
「自律・自助」は社会保障の考え方の否定
 高齢期の生活は「自律・自助」の精神が基本だとして、税金で負担する考えを切り捨て、保険料を負担しないものには給付しないという保険方式に固執しています。この考え方からは、労働者と高齢者にい
っそうの負担と生活苦を押しつける以外の案は出てきません。「自律・自助」ですませることは、社会保障の考え方の否定につながります。世界の労働者がたたかいの中でかちとってき社会保障の歴史に逆行
するものです。
 
深刻化する年金空洞化への解決策はなし
 「方向性と論点」は、21世紀の半ばまで見通す年金試算をしていますが、日本の年金制度の最大の問題点である国民年金の空洞化、すなわち、無年金・低年金の人が増え続けている問題については、なん
の解決策も示していません。国民年金2154万人に対して、869万人(4割)が未加入・未納・免除者です(2000年)。特に青年の失業率が上がっていることは、事態を深刻にしています。潜在失業
者が750万人にもおよぶと言われています。非正規雇用者が増え、厚生年金の空洞化も加速しています。ところが、「方向性と論点」は保険料の「徴収強化」をいうのみです。経済不況がすすむなか、これ
が解決策にならないことは明らかです。
 
女性の低年金問題も解決せず
 女性の低年金、男女の実質的な年金格差の是正についても、解決策が示されていません。ライフスタイルの変化に対応するとして、第3号被保険者(専業主婦)の問題、パート労働者の厚生年金加入が提起
されていますが、あろうことか、専業主婦の年金額を減らすことが選択肢の一つとして提示されています。これでどうして女性の年金問題の解決策といえるでしょう。女性の低年金への解決策なしに、21世
紀に向けての年金改革とはとうていいえません。
 
世界の流れからの乖離にも反省なし
 国連の社会権規約委員会は、2001年8月、政府にたいして、「年金制度に最低年金を導入する」よう、また、「男女の年金格差を可能なかぎり最大限改善する」よう、勧告しました。社会保障審議会年
金部会でも、この国連の勧告については論議されず、「方向性と論点」の中でもまったく言及されていないのは、不当です。すべての高齢者が安定した生活ができるように保障することは、経済状況の如何に
かかわらず政府が最優先に考慮しなければならない人権の問題です。憲法25条の上からいっても無年金者の放置、年金の男女格差の放置は許されず、この問題に正面からとりくむ年金制度の改革を強く求め
るものです。
 いまこそ、高齢期の生活を真に保障する年金問題の解決策として、国と大企業の負担による最低保障年金制度の創設を考えるべきです。
 
国庫負担2分の1の財源を消費税増税によることは許さない
 基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1にすることは、当然ですが、この財源は「安定した財源の確保をして」とあいまいな言い方になっています。首相をはじめ政府関係者から、いっせいに消費税の
引き上げが言われています。消費税は、最悪の逆進課税であり、高齢者や低所得者など弱者への負担をますます増大させるものになり、断固として反対していく必要があります。
 今日の財政危機の大きな要因の一つは、法人税の基本利率が1987年の42%から99年の30%へと引き下げられたこと、また、所得税の最高税率を97年の70%から99年の37%にまで引き下げ
られたことなど、不公平税制にあります。また、連結決算(系列会社の欠損を埋め合わせる)で収益を隠蔽し、トヨタなどは年間1兆円の利益を2年も継続しています。
 税方式においては、あくまでも消費税ではなく、応能負担原則、累進税率を採用し、大企業の冨は社会に還元されることが重要です。
 
国民に痛みを押しつける小泉経済政策・社会保障全面改悪に抗して
 厚生労働省の「年金改革」は、小泉内閣の骨太方針に添ったものです。アメリカの巨大資本の利益に迎合し、日本産業の空洞化や日本経済のアメリカ資本主義への従属をいっそう強めていく一方、国民には
耐え難い痛みを押しつける小泉経済政策の中で出されてきたものです。いきづまった経済を国民への増税、社会保障全面改悪で乗り切ろうとし、くらしを破壊していくことを恥じない反国民的な政策です。
 いま、世界には、発展途上国やヨーロッパなどを中心に、アメリカ中心の競争第一主義、戦争や環境破壊の政策に反対して、もっと公正な経済システム、多民族の共存共栄を求める運動がひろがっていま
す。すべての人間が尊厳をもって高齢期を過ごせるよう求める運動は、こうした運動とも連帯するものです。雇用の改善を求める現役労働者のたたかいと共同することも大切です。
 なお、年金改定の議論をすすめる一方で、その結論も出ないうちに、物価スライドの凍結解除による年金の切り下げが、強行されようとしていることは不当であり、容認できません。

「年金改革の骨格に関する方向性と論点」の具体的な内容に即して
 
・特に平成16年の年金改革において取り組むべき課題
(1)年金制度の体系
(2)給付と負担の在り方
(3)給付と負担の関係が分かりやすい年金制度
(4)少子化、女性の社会進出、就業形態の変化に対する対応
(5)国民年金の徴収強化
(6)公的年金制度の一元化の推進 
(7)総合的な社会保障の在り方と年金改革
 
* 特に平成16年の年金改革において取り組むべき課題
〜国庫負担2分の1問題と消費税増税〜

 
 「方向性と論点」は、7点にわたる「骨格」の提示に先立って、特に取り組むべき課題として、基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げることと、保険料引き上げ凍結の解除をあげています。この2点
が、「方向性と論点」の前提となっています。
 国庫負担割合の引き上げは、前回からの約束であり当然のことです。しかし、その財源については、「安定した財源を確保して」と4年前から一歩も出ておりません。
 年金部会では、多くの委員がその財源を消費税に求めることを主張しています。財界代表にいたっては、基礎年金の全額を消費税で賄うことを要求しています。これは広く浅くなどと称しながら、本音は、
社会保障費の事業者負担の軽減を要求しているのです。
 消費税は最悪の逆進課税です。年金収入で細々と暮らす高齢者にとって最も過酷な税金です。断固としてこのたくらみを阻止しなければなりません。無駄な公共工事費や軍事予算を削減して、公的年金制度
など社会保障制度の充実を図るべきです。これは25.26%といわれる日本のGDPに占める社会保障費を、スウェーデン52.78%、フランス41.44%など(経済財政諮問会議2002/11/1 提出資料)、ヨーロッパの水
準に近づけることで解決できる問題です。欧米諸国にくらべて保険料の事業主負担が低いのも日本の特徴です。たとえば、日本では労使負担割合は折半ですが、フランスでは、労働者負担9.61%、事業主負担
31.97%であり、また、スウエーデンでは、労働者負担6.95%、事業主負担28.58%です(社会保障審議会年金部会 2002/4/19 提出資料)。もっと事業主負担を上げる選択肢もあるはずです。
 また、「保険料引き上げ凍結」は、前回年金改革時に決めた引き上げを、景気対策の一環として凍結してきたものです。不況が深刻さを増し、国民の暮らしがますます厳しくなっているなかで、年金保険料
を引き上げることには反対です。
 
(1)年金制度の体系
 
 ここでは「年金制度の体系」と「積立金の保有」について述べています。
 「年金制度の体系」について、「方向性と論点」は、@現在の制度体系、A基礎年金を税方式とする考え方、B定額の公的年金と私的年金を組み合わせる考え方、C所得比例年金と補足的な給付を組み合わ
せる考え方、の4つを紹介しています。現行制度体系以外の3つの制度について、それぞれの問題点、疑問点を指摘した上で、「社会保険方式に基づく現行の制度体系を基本として、改革を進めていくことが
適切」であるとしています。 
 Aの基礎年金を税法式とする考え方は、私たちが要求している、全額国庫負担による最低保障年金制度に繋がる考え方です。「方向性と論点」は、「国民年金における未加入・未納問題を解決できる等の利
点」を認めていますが、「自立と自助の精神」に反するとか、巨額の税財源が必要とか、所得制限が不可避であるなどとして、これを退けています。公的年金制度が社会保障の制度であることに目をつむり、
社会保障制度を弱肉強食の市場経済原理に、無理やり従わせようとするものです。しかし、税方式について、「総合的な議論が十分行われることが必要」と彼らもいわざるを得ない情勢になっていることには
注目する必要があります。
 Bの定額の公的年金と私的年金を組み合わせる考え方は、社会保障費の事業者負担を免れようとする財界の要求であり、公的年金制度の破壊を意図するものです。
 Cの所得比例年金と補足的な給付を組み合わせるやり方は、スウェーデンにおいて1999年の改革で生まれた制度で、無・低年金者に税財源による給付、保障年金を含む制度です。これまた精神におい
て、最低保障年金制度に通じるものです。
 「方向性と論点」は、結論として、「公的年金制度の制度体系」として@「社会保険方式に基づく現行の制度体系を基本」とすること、A基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるとともに、徹底し
た保険料収納対策を講じること、B多段階免除の導入の検討などを述べています。国庫負担割合を2分の1に引き上げることは当然ですが、財源問題として消費税の増税が言われはじめていることは重大で
す。多段階免除は国民年金保険料の支払方法や年金給付を複雑にするなど、様々な問題が含まれており、これが、保険料未納者の増加に対する抜本対策とならないことは明らかです。
 
財政方式と積立金の運用について
 「方向性と論点」は、実質的に年金額を保障するためには、賦課方式を基本とすることが適切であるとしています。その上で、賦課方式は人口構造の変化の影響を受けやすいので、少子高齢化の進行する
中では、段階的に保険料を引き上げる必要があるとし、なお、保険料の急激な上昇を抑えるためには積立金の運用収入を確保する必要があるとして、膨大な積立金の保有を正当化しています。
 公的年金制度の積立金は2001年度末147兆円(厚生年金と国民年金)で、この額は年金支給額の5年分(国民年金は2.5年分)に相当する額です。賦課方式を基本とするならば、この積立金は過大
であり、これを積極的に保険料負担の軽減や給付改善に活用すべきです。
 積立金の運用も問題です。2001年度末でいうと、積立金全体では2.8兆円の黒字とされているものの、年金資金運用基金の累積損失は3兆円余りと発表されています。先ごろの報道によると厚生労働
省は、今年度上半期だけで、2兆円余の運用損を出したことを発表しました。すでに株式投資などの失敗で5兆円を超える運用損失を出していることになるのです。厚生労働省は、このことに責任をとるべき
です。アメリカの年金制度さえも危険が大きいとして禁止している積立金の株式投資は止めるべきです。
 
(2)給付と負担の在り方
 
 「方向性と論点」は、これまでの方式は「5年ごとの財政再計算の際に、人口推計や将来の経済見通し等の変化を踏まえて、給付水準や将来の保険料水準を見直してきた」が、これでは若い世代に年金制度
への不安を生じているなどと注釈、給付と負担の見直しを提案しています。いくつもの見直し案を並べていますが、国民にとってどれも選択のしようのないものばかりです。年金への国民の不安は、リスト
ラ・倒産、長引く不景気のもと、競争社会で明日の展望も見いだせない自公政治に根源があります。その転換をはかることこそ、不安解消のきめ手になります。
 「方向性と論点」は、これまでの5年ごとの見直し方式に、人口推計や経済見通しの変化等を加味する「方式T」と、最終的な保険料水準を法律できめ、その負担の範囲内で給付を行うことを基本に、少子
化等社会経済情勢の変化に応じて給付水準が一定の限度内で自動的に調整される「保険料固定方式、方式U」を提案し、いろいろな組み合わせによる「試算」をしています。
 
方式T、5年ごとの財政再計算期での見直しについて
 「方向性と論点」は、方式Tについて「給付水準維持方式」と「給付と負担の双方見直し方
式」を示しています。後者については、紹介のみで試算を省略しています。「給付水準維持方
式」については、これまでと同じように給付水準を基本的に維持しながら、5年ごとの財政再
計算で、保険料値上げ計画を見直す、しかし、これまでとちがって、「社会経済情勢等の変
化」を条件として加えるとしています。
 試算の結果として、基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げても、国民年金の場合、
現行月13,300円の保険料を2016年度以降20,500円に、厚生年金の場合、現行13.58%(総報
酬・労使折半)の保険料率を2030年度以降23.1%にしなければならないとしています。現
行の給付水準を維持することが難しいといいたいのでしょう。

方式U、保険料固定方式について
 この方式は、最終的な保険料水準を法律で定め、その範囲内で給付を行うことを基本として
います。現行の厚生年金は、一人あたりの手取り賃金の上昇率や物価上昇率などで年金額が改
定される仕組みです。それに少子化や社会経済情勢の変動の状況、もしくはその予測を加味し
て給付水準を自動的に調整(減額)しようというのです。これは給付水準などを引き下げるの
にいちいち法律改正をしなくて良いという、政府と財界にとって都合のいい制度です。反対に
国民の側からは制度改善の要求がむずかしくなります。
 「方向性と論点」は、この仕組みを「マクロ経済スライド」と名付け、年金財政が安定する
見通しが立つまでの間、「特例期間」として時間をかけてゆるやかに調整するとしています。
そして「マクロ経済スライド」の方法として、次の4通りを示しています。
1.実績準拠法、名目年金額下限型、これが厚生労働省の本音のように読み取れます。
2.実績準拠法、物価下限型
3.将来見通し平均化法、名目年金額下限型
4.将来見通し平均化法、物価下限型
 実績準拠法と将来見通し平均化法の違いは、前者が現在のマクロ経済指標を年金額に反映さ
せるのに対して、後者がマクロ経済指標の将来の変動見通しを現在の年金額に反映させるとこ
ろにあります。また、名目年金下限型は年金減額の際、前年の名目年
金額以下には下げないというものです。物価下限型は、減額しても物価スライド分は保証する
というものです。

実績準拠法、名目年金額下限型とは
 「方向性と論点」は厚生年金では、一人当たり手取り賃金の伸びの実績と、社会全体の総手
取り賃金の伸びの実績に差がある場合、この差の分だけ給付水準が調整(減額)されるとして
います。少子化の結果労働力人口の減少が続き、一人当たりの手取り賃金が上昇しても、社会
全体の総手取り賃金は伸び悩み、ないしは、減少することを想定し、その分年金を切り下げよ
うとしているのです。

すでに厚生年金を受けている人(既裁定者)の年金は
 すでに受給中の厚生年金の改定率は、物価上昇率からスライド調整率(マクロ経済スライ
ド)を差し引いたものになります。ただしその結果、既裁定年金が、新規裁定年金の8割を下
回るようになったときは、年金改定率(スライド率)を新規裁定年金と同率にするとしていま
す。なお、名目年金額を保証するとしていますが、物価が下落した場合には、名目額以下に引
き下げられます。

どんな試算がされているか
 「方向性と論点」は、次に示す「試算に関する諸前提」(基準ケース)をもとに試算結果を
示しています。この試算は、基礎年金国庫負担割合を2分の1とすること、厚生年金保険料率
を最終保険料率20%に達するまで毎年0.354%づつ、国民年金保険料を最終保険料18,100円に達
するまで毎年600円づつ引き上げることなどを前提としています。
 「方向性と論点」は、2050年度まで総手取り賃金の上昇率が一人当たり手取り賃金の上
昇率より低いと想定し、その差を将来人口の中位推計で2025年度まで0.3%、2026年度
から2050年度まで1.18%としています。
 従って、賃金上昇率2.0%、物価上昇率1.0%を前提としている2008年度以降、新規裁定
者の場合2025年までは、2.0%から0.3%を引いた1.7%で、2026年度からは2.0%から
1.18%を引いた0.82%でスライドを行うことになります。既裁定年金者の場合2008年度以
降2025年度までは、物価上昇率1.0%から0.3%を引いた0.7%でスライドすることになりま
す。2026年度からは1.0%引く1.18%がマイナスの値になりますのでスライドがありませ
ん。つまり物価が1%上がっても年金額は変わらないということです。
 試算結果(基準ケース)として「方向性と論点」が発表したのがつぎの図です。
 この図は新規裁定者についてのものです。既裁定者はこの図より低くなる仕組みになってい
ます。しかし新規裁定者の80%を下回らない歯止めは用意されているというわけです。
最終保険料率と所得代替率について
 前述のように試算の前提として厚生年金では、保険料率を2022年度まで毎年0.354%づつ
引き上げて最終保険料率を20%(総報酬・労使折半)にするとしています。これは平均的な
労働者(月収36.7万円、ボーナス3.6ヶ月)の場合、月約650円づつの負担増です。保険料率
20%では、ボーナスをならして加えた男子2050年の平均手取り月額598,000円(現在価格)
に対する負担が月額59,800円となります。これに対して給付される年金額は、「所得代替率」
(現役手取り賃金に対する年金の割合)が52%、月額310,000で、その内訳は、本人の年金
223,000円、妻の年金88,000円です。
 「所得代替率」の基準に使われるのがモデル年金です。現在、厚生年金のモデル年金は月額
238,000円(夫の厚生年金+妻の基礎年金)とされ、その額が現役労働者の平均手取り額
401,000円の59%であり、従って、「所得代替率」は59%だというわけです。
 しかし現実には、このモデル年金額は、実際より高い額に設定されています。妻の基礎年金
も満額受給を前提にしていますので、代替率52%、310,000円といっても実際には、その額に満
たない人たちが多くなると考えられます。
 なお、前年の名目年金額は保障するとしていますが、一人当たり賃金や物価が下がった場合
には引き下げられるのです。
 
 
何が問題か
@ 前提はあくまでも仮定のもの
 「方向向性と論点」は、すでに見てきたように様々な前提の上での試算です。名目賃金上昇率0.5%、物価上昇率0.0%、名目運用利回り1.75%(2003年度から2007年度)、名目賃金2.0%、物価
1.0%、名目利回り3.25%(2008年度以降)とされていますが、この通りになるとは限りません。現に2002年度の人事院勧告はマイナス勧告で、早速財界は、民間賃金の更なる引き下げを狙っていま
す。雇用の拡大・賃上げ・個人消費の拡大策など、景気回復の展望を示して試算すべきです。
A このままでは大変なことになる将来人口推計をもとに試算
 将来人口推計では、合計特殊出生率(一人の女性が一生で出産する数、2050年)を1.39としています。これによると現在の人口1億2,700万人が、1億59万人(2050年)、から6400万人
(2100年)となり、生産年齢人口も8,600万人(2000年)が5,389万人(2050年)から3,485万人(2100年)に減少するということになります。これは大変なことです。出生率が
2.08%を下回ると民族は滅亡すると言われているからです。
 少子化は世界的傾向です。スウェーデンやフランスなどでは、出生率の回復に全力で取り組み成果を上げています。我が国では世界的にみても特に急激な少子化が進行しているにもかかわらず、見るべき取
り組みも無く放置したまま人口の減少を当然のこととして試算をしているのです。
B 一人あたり賃金が下がったときや物価が下がったときは、名目額も下げられるのは問題です。
C すでに受給中の人は、物価が上がっても一部しか上げられません。将来インフレの時代がくるときには、受給中の人が大きな打撃を受けることになります。
 
年金課税の見直しについて
 現在、年金は税制上雑所得とされ、公的年金等控除70万円(65歳以上140万円)が制度化されています。また、別に老年者控除50万円(65歳以上)の制度があります。「方向性と論点」は、「公的年金
等控除を見直すべき」などと、年金に対する課税強化に言及しています。年金給付額を減らす方法として、課税強化が提起されているのです。年金制度の改悪で年金を減らし、その上税金でもっと減らそうと
いうのです。
 公的年金等控除は、1987年の税制改正で公的年金を給与所得から雑所得に変更した際に、年金受給者にも、給与所得者と同様の所得控除を認めるべきものとして、制度化されたものです。それは年金が
最低限の生活費を賄うもので、「標準的な年金額には課税すべきでない」とする、当時の厚生省の考え方にも符合するものです。最低限度の生活費に課税しようとする公的年金等控除の縮小・廃止は不当であ
り、阻止しなければなりません。
また、「方向性と論点」は、課税強化で「得られた財源を年金制度に還元することが考えられる」としています。これは国庫負担割合2分の1への財源を消費税に求めるのと同様、社会保障に対する国と大
企業の責任を放棄し、国民の相互扶助にこれを転嫁しようとするものです。
 
(3)給付と負担の関係が分かりやすい年金制度
 
 「方向性と論点」は若い世代の年金制度に対する理解と信頼を高めるため、将来の給付を実感できる分かりやすい仕組みや運営が必要であるとしています。2003年度から当面の取組として、@社会保険
事務所における年金見込額試算対象年齢の引き下げ、A被保険者記録の事前通知と年金見込額の提供、Bインターネット等を利用した年金個人情報の提供を実施したいとした上で、ドイツの「ポイント制」に
言及しています。
 
「ポイント制」について
 年金額をポイント数であらわし、年金ポイント数や年金見込額等の個人情報を定期的に被保険者に提供する仕組みを導入するとしています。「ポイント制」は次の式で説明されています。
@ 基礎年金
年金額=基礎年金ポイント×単価(年金現在価値)
A 報酬比例年金
年金額=報酬比例年金ポイント×単価(年金現在価値)
 基礎年金ポイント:保険料1年間納付で、1ポイントと数える。
 報酬比例年金ポイント:平均賃金の人が保険料を1年間納付で、1ポイントと数える。従って平均賃金より高ければ1を超え、低ければ1に満たない。
 基礎年金の単価:基礎年金額の1/40、現在の単価は20105円になる。
 報酬比例年金の単価:モデル年金額の1/40、現在の単価は30751円になる。
この式に自分のポイント数と単価を代入すれば、現時点での年金額が容易に計算できるというわけです。しかし、報酬比例年金は報酬によって異なり、個人によってちがいます。また、肝心の単価はこの先
「マクロ経済スライド」によって自動調整されるのです。年金額を計算するたびに単価が下がっていて年金額が思うように増えないとすれば、若い世代の年金制度に対する信頼を高めることに役立つとは思え
ません。
 
(4)少子化、女性の社会進出、就業形態に対する対応
 

 「方向性と論点」は、「職場や地域などを含めた社会全体や政府をあげて、従来にもまして本格的に次世代育成支援策に取り組むことが必要」としながら、@育児期間に対する配慮措置の拡充策として、育
児休業取得中の配慮措置を第1号や第3号被保険者にも拡大、A年金額加算の配慮措置、B第1号被保険者の保険料減免などや、年金資金を育英奨学金に使うなど次世代育成支援策の検討をあげています。
 
パート労働者への厚生年金加入について
 「支え手」を増やす取組としては、「短時間労働者等に対する厚生年金の適用」をあげています。しかし、この問題については、@新たな保険料負担への理解、A低賃金の被保険者の増加が年金財政におよ
ぼす影響、B医療保険における取り扱いが検討を要する事項としてあげられています。また、高齢者の就労促進策として、65歳以降の繰り下げ受給の選択、も検討事項とされています。
 パート労働者の最大の問題は、低賃金であることです。一方で、女性を低賃金のパートで搾取することを是認しながら、そのパート労働者から保険料を徴収する方策では、女性の低年金の解決にならないこ
とは明らかです。パート賃金の抜本的な引き上げなどの改善策が真剣にとりくまれるのでなければ、パート労働者の負担増だけという結果に終わりかねません。また、雇用状況がますます厳しい中で、企業
は、保険料納付義務から逃れるようとして、パート労働者の収入を年収65万円以下に押さえようとするケースも出るでしょう。「就労調整」をなくす目的とした政策が新たな「就労調整」を生むという矛盾
も起こりかねません。
                          
第3号被保険者問題について
 第3号被保険者の問題については、「女性と年金検討会」が6つの選択肢を出していることを示しながら、「方向性と論点」としては、あらたに次の4つの選択肢を提示しています。
1 夫婦間の年金権分割案
 給付と負担の関係を完結するため、賃金分割という仕組みを取り入れ、年金給付を算定する際、世帯賃金が分割されたものと擬制し、個人がそれぞれ負担と給付を受けると擬制する方式が述べられていま
す。
2 負担調整案
 「女性と年金検討会」で出されたいずれかの方法で、何らかの保険料負担を求める選択肢です。
3 給付調整案
 第3号被保険者には保険料負担は求めないが、基礎年金給付を減額するという案です。たとえば、@国民年金の免除者と同じ扱いで3分の1とする、A第3号被保険者分の拠出を一部分に限り、給付も一部
分とする(半額免除、3分の2給付など)、などです。
4 第3号被保険者縮小案
 現行制度を維持しつつ、短時間労働者等に厚生年金を適用し、被扶養者認定基準を見直すことで、対象者を縮小する案です。
 「方向性と論点」は、それぞれの案についての問題点、たとえば、「年金権分割について選択しない場合の取り扱い」「負担調整案で定額保険料の問題が被用者グループにおよぶ問題」「給付調整案では、
基礎年金の給付が下がる問題」などを指摘しています。
 
第3号被保険者問題の抜本解決の道は
 第3号被保険者の問題については、どの方法をとっても「新たな矛盾」が生まれる解決策にしかなっていません。現実に収入のない専業妻から保険料を徴収することはできません。どのような徴収の仕方を
するにしても、勤労者や女性への新たな負担増になることは許されません。
 今回、あらたに「年金権分割案」と「給付調整案」が出されました。「年金権分割案」については、さらに国民的な議論を深めることなしに実施できるものではありません。問題は「給付調整案」です。何
とかして、給付を切り下げたいと考える厚生労働省が出してきたものですが、現在でも低年金でその改善を国連からも勧告されているのに、これでは、いっそう大量の女性の低年金をつくりだすとんでもない
選択肢で、とうてい認めることはできません。
 第3号被保険者についての論議は、矛盾を正しく解決する方法が年金者組合が提唱する全額国庫負担による最低保障年金の創設にしかないことをますます明らかにしています。
 
女性の低年金の改善策こそ最優先に
 女性の年金についての「方向性と論点」の最大の問題は、女性の低年金、年金支給額における実質的な男女格差の問題について、まともな改善策を示していないことです。
 女性の低年金の最大の原因は、女性の低賃金、就業を継続しにくい雇用条件(賃金、仕事の内容・やりがい、研修、昇進・昇格、の男女差別)にあります。諸外国にくらべてとりわけ厳しいこの男女差別を
放置して、年金の平等は困難です。厚生労働省は、この課題の真剣な分析や是正に向けての努力の方向を示すべきです。 
 
少子化解決には何が必要か
 少子化は政治の力によって改善可能なものです。少子化は、@若年者の雇用状況が悪化の一途をたどり、男性も女性も親元をはなれて自立した生活を営める賃金が支払われていないこと。A雇用の安定、住
宅、などの問題から、結婚できる条件が困難さを増していること。B女性が働きながら出産・育児をする条件がないこと。企業の側の既婚者差別、保育所の不足、育児休業が取得しにくいこと。Cますます苛
酷になる労働時間、競争の激化で、出産・育児がむずかしく、夫の協力も得にくいこと、D教育費の公的援助が縮小されていること、などが原因になっていることは明らかです。
 こうした分析の上に立って、先進ヨーロッパ諸国の教訓に学んだ、抜本的な改善策が必要で、ただちに着手すべきです。
 
 また、当面、今すぐにでも、「脱退手当金を無利息で戻入して年金実績につなげるようにすること」「受給要件になる納付期間の短縮」「厚生年金の報酬比例部分の計算式の改善」など可能なあらゆる方法
を使って女性の低年金を改善すべきです。
 社会保障の充実と男女平等の前進は相互に深くかかわりあっていることは、北欧などの歴史的経験によっても明らかです。21世紀に向けて、どのような社会を築くべきか、真に高齢者や女性の「自立」
「人権」を保障する社会とはどういう社会か、などの議論とあわせて年金制度の問題を考えていく必要があります。
 
(5)国民年金の徴収強化
 

 「方向性と論点」は、1号被保険者(自営業者など)の保険料未納の増加など、深刻な年金空洞化の実態を認め、「未納の増加は被保険者1人当たりの基礎年金拠出金単価の増大という形で、多大な迷惑を
及ぼす」とその矛盾を指摘しています。そのうえで、「徴収が法令の規定により担保されている」として、安定的な運営を確保するために「徹底した保険料収納対策」が必要であると述べています。
 保険料などの徴収金は「国税徴収の例によって徴収する」とされています。「法令の規定による」「徹底した保険料収納対策」は、強制徴収など、払いたくても払えない弱者を追いつめるものです。
 1号被保険者の未加入、未納問題は、所得の有無にかかわれず同じように保険料を徴収する現行制度に起因しているのです。基礎年金を保険方式から税方式に転換する以外に、この問題の根本的な解決はあ
りません。その財源は、財界が求めている消費税でなく、累進課税の直接税にもとめるべきは当然です。「最低保障年金制度」に確信を持って運動を強めましょう。
 
(6)公的年金制度の一元化の推進
 
 公的年金制度の一元化について、給付と負担の見直しの議論を踏まえて21世紀初頭の間に結論が得られるよう検討を進めるとしています。くわしい説明はありませんが、現行の年金水準の切り下げになら
ないよう監視する必要があります。
 
(7)総合的な社会保障の在り方と年金改革
 
 総合的な社会保障の展望のもとで、医療、介護など、他の社会保障と整合性ある年金改革を進めることが必要であるとしています。医療・介護・年金など社会保障のすべての分野での改悪がすさまじい勢い
で進行しつつあるなか、いまこそ、民主勢力の側の総合的な展望を対置してたたかう必要があります。
 
年金の抜本改善、最低保障年金制度の確立に向けて
 
 いま世界は激動の時代を迎えています。市場優先主義のアメリカや日本のやり方に対する批判も強まっています。持てるものと持たないものとの格差をちじめ、公正な経済システムを確立することが求めら
れています。今こそ、すべての国民の生活保障に政策の重点を切り替えるべきときです。
 「年金改革の方向性と論点」は、老後の安定を望む国民にとって明るい展望を示すものになっていません。一般財源と大企業の責任と負担による保険料なしの最低保障年金制度の確立は、国民に安心を与
え、景気にもよい刺激となるでしょう。全日本年金者組合は要求が一致する団体や個人と力を合わせて、最低保障年金制度の確立を求め、これを厚生労働省の年金改悪に対置してたたかうものです。    

年金の物価スライド凍結解除による年金切り下げに断固反対します
2002年8月6日                    全日本年金者組合 中央執行委員長  小島 宏
 政府は先の国会で、医療制度の改悪を、2700万の反対署名に結実した国民大多数の反対の声に耳も貸さず強行成立させました。この改悪は、とりわけ高齢者には大きな打撃で、「これでは、身体が悪くなっても病院に行けない」と悲鳴を上げています。
 その上、来年度の予算編成で、年金の物価スライド制を悪用して、年金支給額を切り下げるとしたことは、絶対許すことができません。
 これは、ただでさえ低い年金を唯一の糧として生計を立てている高齢者にとっては、生活を直接脅かすものです。本来、物価スライド制は、物価上昇のもとでも年金生活者のくらしを守ることを目的とした施策です。また、3年連続物価スライドを凍結したのも、年金支給額の引き下げは、高齢者のくらしを破壊するだけでなく、不況をいっそう深刻なものにすると懸念されたからではなかったでしょうか。国民や勤労者のふところを冷やしておいて、景気が上向くはずがありません。
 いま、高齢者は高い介護保険料や利用料に悩まされています。ぎりぎりの生活を支えている年金をこれ以上引き下げるのは、高齢者が人間として生きる尊厳をおかし、また、社会保障制度を崩壊に導くことに他なりません。
 政府の社会保障政策に猛省を促すとともに、年金切り下げの方針を撤回されるよう高齢者の声を代表して強く求めます。

「女性と年金検討会」の報告書について
2002年5月10日  全日本年金者組合女性委員会
 厚生労働省の「女性と年金検討会」は、約1年半の論議の後、2001年12月14日に報告書を出し、これまでの検討結果をまとめました。これについて全日本年金者組合女性委員会は次のように考えます。

 (1)年金は、労働によって社会的な富を築いてきた人間が労働ができなくなったときに、なお人間らしく尊厳をもって生活ができるよう人類の長いたたかいの中で勝ち取ってきた人間の生存権の保障であり、憲法第25条に基づいて内容を充実させていくべきものです。

 (2)日本では、他の先進諸国には見られない大きな年金の男女格差があるのが特徴であり、昨年8月に出された国連の社会権規約委員会の最終見解の中では、日本政府に対して、「年金制度に存続する事実上の男女不平等が最大限可能な限り改善されることを勧告する」と強調しています。
 ところが、この年金の男女格差、女性の低年金をなくすということについて、きちんと正面から論議していないところに、この「女性と年金検討会」報告書の根本的な問題があります。

 (3)賃金や年金の個人単位化は、女性の自立と平等の観点からいって、望ましい方向ですが、日本では、雇用・社会慣行・家族的責任などにおける男女差別が大きく、それがすべて、女性の低年金につながっています。個人単位化をいう前に、女性の低年金の根底となる雇用の問題、すなわちパートタイムを含めた労働者の賃金その他の雇用条件の改善、労働時間の短縮や育児・介護に対する支援など、女性が働き続けられる条件整備がまず必要です。厚生労働省は、雇用差別解消のために具体的な手だてをまずとるべきです。

 (4)いま、低年金・無年金の人が増えていますが、その多くが女性です。この問題を解決するためにも、全額国庫負担の最低保障年金の創設が急務です。2001年8月に出された国連社会権規約委員会の日本政府に対する勧告の中でも、日本の年金制度の中に最低保障年金を導入することがうたわれています。

 (5)当面、現行制度の中でもできること、たとえば、脱退手当金をさかのぼって戻入することを認め、年金につなげられるようにすること、現在25年の年金受給資格の年限を10年に短縮すること、35歳以降厚生年金期間がある女性の特例措置を廃止しないこと、また、第3号被保険者の手続きをせず保険料未納になっている人の特例措置を実施することなど実行すべきです。

 (6)女性の年金のさまざまな課題、第3号被保険者の問題など、解決が求められている問題があるにしても、この検討結果がはたして全体として、女性の地位向上と年金改善に役立つのかどうかを問い直すことが大事です。

「女性と年金検討会」の報告書の6つの課題について

 @ モデル年金を「共働きモデル」にすることは男女の賃金格差が依然として大きい中では問題が大きいと思います。
 現行の厚生年金は現役男子の賃金が家族をささえ、男子の年金が主として老後の家族を支えるという考え方で年金の設計がされているといわれています。ところが、共働き家族が増えている現状にあって、この設計では厚生年金の報酬比例部分が過剰給付になるとして、この水準を考え直す必要があるとしています。働く女性が増えたことを口実にした厚生年金の切り下げは許されません。

 A 短時間労働者に対する厚生年金の適用は重要な課題です。しかし、短時間労働については次のような問題があることに十分留意する必要があります。
 (1)パート労働は、今日本の製造・流通業の主要な労働力になっているにもかかわ    らず、劣悪な賃金と労働条件が放置されています。パート賃金・労働条件の改    善が急務です。
 (2)短時間労働者を厚生年金に適用する場合は、その低賃金を考えれば、保険料に    ついては、全額を企業が負担すべきです。なお、中小企業には、国が保険料負    担の援助をする必要があります。
 (3)短時間労働者の厚生年金の適用にともなって、健康保険についても被扶養者で    なくなり、あらたに保険料負担が必要になったり、税制度の変更で、本人や家    族に負担が増えることには反対です。

 B 第3号被保険者の保険料にかかわる問題ついては、6つの選択肢を出しましたが、矛盾が多く、今後の検討課題にしています。
 この問題については、現行の第3号被保険者制度は、第1号被保険者(自営業や農業者、無収入の学生、失業者など)との均衡を欠くし、また、第2号被保険者(共働き労働者、単身労働者)が、第3号被保険者の保険料を一部負担しているのは不公平であるという意見があります。
 しかし、年金は、何よりも生存権にかかわる社会保障の権利であり、すべての女性が老後の所得保障をきちんと受ける権利をもっていることを基本にすえて考える必要があります。
 もともと専業主婦の年金は、夫の加給年金として支払われていたものが、1985年の第一次年金「改定」で、第3号被保険者制度が導入され、専業主婦自身の国民年金とされたものです。この経過を考えれば、第3号被保険者のあらたな保険料徴収は道理にあいません。また、現実に収入のない専業主婦から保険料をとることは、どういうとりかたをしても、勤労者世帯の負担増をもたらします。
 第3号被保険者制度は年金の世帯主義の考え方にたつものであり、女性の自立という観点から働く女性が不利にならない制度にすることが望ましいという意見もあります。しかし、諸外国には見られない圧倒的な雇用・賃金差別がある現状の中では、第3号被保険者から保険料をとることは反対です。むしろ、自営業者の妻、失業中の労働者、学生などの保険料が免除され、年金も減額されない制度に改めるべきだと考えます。

 また、共働き世帯の女子の加入者および単身加入者の保険料負担額から3号被保険者の基礎年金への拠出分を免除し、その負担額は企業に拠出させるなど、勤労者世帯にこれ以上負担が増えない方法を検討すべきです。

 C 育児期間の配慮措置については、さらに充実が必要であす。現在育児休業中の労働者は保険料が免除されていますが、育児休業をとらない労働者、や自営業や専業主婦についても、育児中は保険料が免除される制度をつくるべきです。ヨーロッパの多くの国ですでに、育児期間中の保険料免除または年金の給付増などが考慮されています。少子化対策としても、育児中の配慮措置は必要です。また、要介護の家族をかかえ就労ができない者についても、免除の方向で検討がなされるべきです。

 D 離婚時の年金分割については、実現の方向で十分な検討を重ねるべきだという検討会の結論に賛成です。

 E 遺族年金制度については、これを基本的に維持すること、また、女性労働者の保険料納付実績が反映するような仕組みが必要であるというまとめは賛成ですが、たとえば、遺族年金の報酬比例部分を現行の4分の3から5分の3にすれば、専業主婦の遺族年金が現行より削減されることになります。これ以上高齢女性の生活困難がいっそう強まることには反対です。
資料:「女性と年金検討会」の6つの課題についてのまとめの概要
1.標準的な年金(モデル年金)の考え方
 女性の一定の厚生年金加入期間を前提とした「共働きモデル」を想定していく
  ことが適当。  

2.短時間労働者等に対する厚生年金の適用
  多様な形態での就労を通じて自らの年金保障の充実をはかることができるよう
  にするとともに、年金制度の支え手を増やすため、短時間労働者の厚生年金の適
  用について拡大をはかる方向で、様々な論点について検討していくべき。
 * 正規雇用者の2分の1以上の就労がある場合。
* 年間収入が65万円以上の場合

3.第3号被保険者制度
  社会保障制度としての年金制度の基本に関わる大きな問題。必要な改革が行わ
  れることを強く希望。そのためには、国民各界各層の間で、この報告書における
議論の整理と問題提起をスタートラインとして、幅広い議論が繰り広げられ、国
民的合意が形成され、適切な結論が見出されることを希求。

4.育児期間に係る配慮措置
  女性が多様な就労を通じて自らの年金保障の充実を図るという方向性の中で、
  年金制度としてどのような配慮を行うことが適当かどうかという点について検討
  すべき。

5.離婚時の年金分割
  離婚時の年金分割が可能となるような仕組みを講じる方向で、専門的技術的な
多くの論点について十分な検討を重ねるべき。

6.遺族年金制度
  共働き世帯と片働き世帯との均衡を図る、自ら働いて保険料納付したことがで
きる限り給付に反映する仕組みとする等の観点から、見直しに向けて綿密に議論
していくことが必要。 │
いま何故「最低保障年金」か
政策提言:「最低保障年金制度を柱とする公的年金制度の抜本的改革」について
2001年6月  年金者組合定期大会

1.年金の「空洞化」はゆゆしい事態

 いま、人びとの生活不安は全国に広がり日に日に深まるばかりです。仕事のこと、家庭のこと、教育のこと、老後のこと、心配は若い世代にも、高齢の世代にもおおいかぶさっています。
 公的年金は、一九八五年の第一次改悪以来、二○○○年までに四次にわたって改悪されて、保険料が引き上げられ、給付が引き下げられました。
 一九六一年、国民年金法の制定によってスタートした「国民皆年金」は、四○年たった今日、名ばかりになっています。
 いま、六五歳をこえて無年金の人が60万人もいます。やがて、無年金や月二万円程度の低年金の人が、九三四万人にも達すると見込まれています。国民年金の「空洞化」です。加えて、企業倒産の続出、無権利のパート・フリーター・派遣労働者の増大で、厚生年金もまた「空洞化」が進んでいます。
 また、女性の低年金の実態は深刻であり、専業主婦の保険料についても問題になっています。


2.いっそう年金を切り下げる政府・与党

 しかし政府・与党は二○○一年三月三○日、社会保障を一層切り下げる「社会保障改革大綱」を発表し、これをもとに二○○二年には政策を具体化しようとたくらんでいます。年金については、「基礎年金への国庫負担・二分の一への増額」を先送りにし、「保険料の引き上げ凍結」を解除するなど、いっそう国民に負担を強いようとするものです。
 一方、財界は、基礎年金(国民年金)の全額税方式を強調しているものの、その財源は消費税で賄うこんたんであり、これまた国民に負担を押しつけ、大企業の負担をなくそうというひどいものです。

3.社会保障は譲れない権利

 社会保障は、世界の人びとのたゆまぬ努力によって歴史的に発展してきた人間の生存権の保障であり、私たちが譲ることのできない権利です。I・L・O憲章(一九四四年、国際労働機関)をはじめ世界人権宣言(一九四八年、国連総会)、社会保障憲
 章(一九六一年、世界労働組合大会)、国際人権規約(一九六六年、国連総会)などにおいて、社会保障が人間の尊厳を保持する基本的なものであることが、世界の人びとの共通の認識として確認されています。日本国憲法第二五条もまた、この精神に立っています。
 私たちは、ナショナル・ミニマム(全国民の最低生活保障)を実現するために、労働者の全国一律最低賃金制とともに、最低保障年金制度の創設が不可欠であると確信します。

4.年金の充実は国民世論

 私ども全日本年金者組合は、「最低保障年金制度創設を柱とする公的年金制度の抜本的改革」の実現をめざし、諸団体の仲間のみなさんとともに、運動を発展させてきました。すでに、全国三、二九九地方議会(一九九九年四月一日現在)のうち四○%強の一三五○議会が、国に「年金制度の改善を求める意見書」を提出して各方面から注目を集めております。
 西欧・北欧諸国の中には、年齢・居住期間など一定の条件を備えれば「保険料なしで生存権を保障する公的年金を支給する」という制度を備えている国が少なくありません。
 国の財政や税制の仕組みを国民生活優先に改め、「最低保障年金制度を柱とする公的年金制度の抜本的改革」をめざす私たちの要求は、歴史の発展の道すじに立つものと考えます。
 これが実現すれば、「無年金の人」「低年金の人」の問題は解決し、公的年金制度の「空洞化」に終止符がうたれるでありましょう。女性の低年金も改善され、専業主婦の保険料問題も解決します。
  高齢者も若い人びとも、将来に大きな安心を得て、元気づくに違いありません。

  ──────────────────                    
  以上のような考えに立って、私たちは次のように提言いたします。


                                     
 1 最低保障年金制度を柱にした
   公的年金制度の抜本的改革の概要     
                   

 私たちが要求する年金制度は、「全額国庫負担の最低保障年金制度の上に、社会保険方式の国民年金・厚生年金・共済年金を上積みした2階建ての公的年金制度」です。
 この制度は、現行の国民年金(基礎年金)制度を抜本的に改革することによって、現在の制度から除外されている人も含め、すべての高齢者の年金額が引き上げられる制度の構築を目指すものです。

                   
〔最低保障年金制度(一階部分)の概要

 @ 最低保障年金に関する費用は全額国庫負担とし、保険料なしの年金とします。
 A 支給対象は一定期間在住している在日外国人を含む六○歳以上のすべての人とします。
 B 支給額は国民的合意に基づき決めることになりますが、当面、全員一律、月額八万円とします。


〔最低保障年金制度に上積みする新・国民年金、新・厚生年金、新・共済年金(二階部分)の概要

 @最低保障年金に上積みする年金は、社会保険方式とします。
 A給付額は、次のことを踏まえ、決めます。
  ア)社会保険方式であるから、保険料との整合性を保つこと。
  イ)被用者年金(新・厚生年金、新・共済年金)については、最低保障年金との合計額を、労働者の平均賃金を目安として決めること。
 B保険料については、新国民年金にあっては、所得にたいする定率制とし、被用者年金については、労使負担割合を事業主七、労働者三(中小零細企業については、事業主五、労働者三、国二)とします。
 C新・国民年金、新・厚生年金、新・共済年金の受給資格期間は、一○年とします。
 D二階部分の各年金は公的年金とします。 したがって、運営については国が責任を負うことになります。
 E二階部分の各年金の年金額、財源、保険料の減免措置等の具体的な計画は検討課題とします。

〔経過措置

 これまで国民年金(基礎年金)に加入し保険料を支払っていた人については、その額に応じて、最低保障年金(当面八万円)に一定の額を上積みし、不利益にならないよう経過措置を講じます。

                                    
 2 財源について                        
                                     
1.財源についての基本的な考え方。

 @わが国では税金・社会保険料を四割しか国民に還元しておらず、先進国では最低です。ドイツなみに六割に引き上げれば三十兆円の財源が生まれます。
 また、社会保障の費用は、国民や企業が産みだす「社会的な富」を国が国民本位に再配分する立場でつくりだすのが基本です。
 Aこれに反し、社会保障の費用を消費税の増税で賄うという話がもちあがっています。これは大企業の社会保障負担を減らすと同時に、所得が低い人ほど負担が重くなる庶民いじめの悪税であり、断固として反対します。
 B最低保障年金制度の創設を柱とする公的年金制度の抜本的な改善は、医療、介護など社会保障全般の改善の一環として実現すべきものです。
 C以上の改善は、国と地方の借金が六百六十六兆円という空前の財政危機を打開させる要求とも結合させて財源を確保することを基本とします。

2.最低保障年金制度の創設にむけて有利な条件をつくりあげていくため、財源の確保について当面できること。

 @基礎年金への国庫負担を約束どおり直ちに二分の一に増額させ、さらに全額に引上げさせます。
 A労働時間の短縮による雇用の拡大で被用者年金の被保険者を増やし、年金財政に貢献させます。
 B賃上げ、全国一律最低賃金制の確立で年金財政を充実させます。

3.国の予算の使い方と税金の在り方について次のように改善します。

 @年間五十兆円の公共事業費を生活・福祉型に転換することを重点にしながら、段階的に削減させます。
 A軍事費を段階的に減らします。
 B大企業・大金持ち優遇の不公平税制を改めさせます。
 C当面は以上の改善によって財政赤字を減らしながら、国民生活充実のための予算を確保し、計画的・段階的な目標をもって要求実現に取り組みます。


4.年金の積立方式を賦課方式に切り替え、過大な積立金を計画的に活用します。

5.将来的には、税制と社会保険制度の改善により、二階部分の財源は大企業と高額所得者による応能負担を原則とした税負担で賄い、労働者・国民の負担を軽くします。

 被用者年金の場合、保険料の負担割合は労働者3/事業主7、中小零細企業の場合は労働者3/事業主5/国2とします。


6.「少子化」対策を抜本的に強め、安心して子どもを産めるよう、働きやすい環境をつくると同時に、労働者全体の労働時間の短縮などで家庭生活と仕事が両立できるよう「働くルール」を確立させます。

 これにより、年金の支え手を大幅に増やすようにします。

                                     
 3 要求実現への道すじ                           
                                     
1. 私たちの要求は、医療・介護・住宅・雇用・最低賃金制・労働環境など、「国民生活の最低条件」の実現をめざす運動全体の発展の中で実現できると考えます。
  私たちは、地域から、地方から、国民的な運動をおこして地方自治体を味方にし、中央の行政・政治にその実現を迫ります。
2.最低保障年金制度の財政的な土台である基礎年金の全額国庫負担の実現をはじめ、制度創設に至るまでの運動の積み上げを次のようにすすめます。
 1 老齢基礎年金の国庫負担をただちに二分の一に引き上げ、さらに全額国庫負担にする。
 2 老齢基礎年金の国庫負担分に相当する年金を、すべての無年金者に支給し、この額に達しない低年金者には、その差額を支給する。
 3 男女の賃金格差など、不利な条件に置かれている女性の年金、無権利状態にあるパート・フリーター・派遣労働者の被用者年金適用の課題など、未解決な課題の解決をはかっていく。


 
補論/政府・財界の宣伝に反論する

「少子・高齢化社会危機論」への反論

 政府は「少子・高齢化社会」を口実に社会保障制度の連続改悪を強行してきました。
  1.「少子化」は政府みずからが招いたもので、これを口実に社会保障制度を改悪するのは道理に反します。
 出生率が一・三八に落ち込んでいる原因は、夫婦の初婚年齢が高齢化していることのほか、認可保育所の不足、長時間労働、サービス残業、出向、単身赴任などで夫が家事を分担する条件が整わないなど、家庭生活を確立できない将来不安があるからです。
 2.出生率を向上させるには、働くことと家庭生活を両立させることです。
 保育所を例にとると、経済企画庁が九七年九月におこなった調査では、保育所の定員数が多い県ほど出生率が高くなっています。
 保育所の拡充と労働条件の改善で出生率を高め、人口が増えれば、年金財政の推計は好転します。
 3.「高齢化社会危機論」は、「今は四人で一人を支えているが、将来は二人で一人を支えることになるので大変だ」というもので、年金制度の改悪が始まる前から宣伝されてきました。
 これは、二十歳から六十四歳までの生産年齢人口を六十五歳以上の高齢者人口で割った数字ですが、生産年齢人口のなかには働いていない専業主婦や学生もいるし、高齢者人口のなかには働いている人もおり、現実にそぐわない計算といえましょう。
 もっとも現実的な計算は、総人口と実際に働いている就労人口との比率です。すると、今も二人で一人を支えているが、将来もその比率は変わらないのです。


「高齢者金持ち論」の真っ赤なウソ

 政府・財界の戦略として「高齢者は金持ちだから負担を求める」という宣伝がおこなわれています。
 1.九四年の全国消費実態調査によると、高齢世帯の収入は夫婦二人の公的年金・恩給収入が月額二十七万四千四百十六円で、現役世帯の三十四万四千六百十三円と比較して両者は接近しているように説明しています。
 だが現役世帯の収入は世帯主だけの手取り賃金、しかもボーナスを除いたもので、高齢世帯の収入がこれに接近しているとはいえません。
 2.貯蓄については、九九年の総務庁の調査で高齢世帯二千九十八万七千円、現役世帯六百四十三万六千円としていますが、実際は六十歳以上無職世帯で三千万円を超す高額貯蓄者が全体の二八%いるため、高齢者全体の貯蓄が多いように描き出しているのです。


国民負担率抑制論は企業の負担軽減がねらい

 政府・財界は国民負担率(国民所得に占める税・社会保険料の割合)を五〇%以下に抑えるとして、社会保障の改悪をおこなおうとしています。
 日本の国民負担率は現在三六・五%で、スウェーデンの七〇・四%、フランス六二・六%、ドイツ五六・二%などにくらべ先進国のなかでは最低の水準となっています。
 重要なことは、だれが負担しているのかということです。ヨーロッパなみに社会保険料を事業主7、労働者3にすれば国民の負担を低くすることができます。国民負担率が高くなっても社会保障・福祉が充実すれば問題はないわけです。
 国民負担率抑制のねらいは、大企業の負担を軽くし、社会保障を改悪することです。


公的年金はつぶれない。ウナギのぼりの積立金で改善の余地は十分ある

 政府の「高齢化社会の到来と年金財政パンク論」は七〇年代から開始され、八五年の第一次改悪で保険料の三倍化、年金額三五%切り下げ、国庫負担五〇%削減などの大幅改悪が始まりました。
 しかし、年金の積立金は八五年以降、年金総額の約五年分以上が積み立てられており、九〇年度から九六年度までは毎年九兆円から十兆円ずつ増えつづけています。
 積立金は、アメリカで一・一年分、イギリス、ドイツは〇・四年分といわれており、日本の積立金は格段に多くなっています。これは、株式投資などのために年金財政が設計されているからです。パンク論などとんでもない話で、改悪どころか改善の余地が十分あるといえます。


「自立・自助」「相互扶助」というが

 政府・財界は「自立・自助」「相互扶助」を強調し、社会保障の基本に据えようとしています。
 働く国民はそのように説教されなくても自立・自助を旨として生活してきたのです。しかし、「失うべき何物もない」労働者を中心に自分の力だけでは生活していけない状態が生じました。また、高度経済成長のもとで核家族が増え、相互扶助も困難になってきました。
 そうしたなかで労働者・国民は国と資本家の責任による社会保障制度を権利として確立し、日本国憲法、世界人権宣言、社会保障憲章で明らかにしてきました。
 政府・財界の「自立・自助」論は歴史的、国際的に積み上げられてきた労働者・国民の権利を否定し、「救貧」政策に逆戻りさせようとするもので、断じて許せないことです。


「福祉目的税」のねらい

 基礎年金の国庫負担の割合を二分の一に引き上げることを口実に政府・与党は消費税増税をもちだす危険性があります。
そのなかで「消費税の福祉目的税化」を主張する動きもあります。
 「福祉目的税」は、ひとたび導入されると福祉の予算が増えるたびに税率を引き上げる問題と、もう一つは福祉予算を増やす必要があっても従来の枠内に制限する問題があります。これは、税率の引上げをのむか、福祉予算の削減を許すか、という選択を迫るものです。
 「福祉目的税」については法律学者のあいだでも、次のような批判の声があります。「日本国憲法の下ではすべての租税は福祉目的のために存在するといってよい。国民は自己が納めた租税がそのような福祉のために充当されることを前提として納税義務を負うのである。したがって、憲法理論的には福祉目的税特有の目的税は存立しえない」 「昨今、二十一世紀の『福祉国家』を財政的に支えるためにも『福祉目的税』という名目で導入しようとする動きがある。(中略)もしそのような福祉目的税が導入されると、当該福祉目的税収入だけが『福祉予算』に充当され、それ以外の租税収入が『軍事予算』に充てられかねない」